日本最大の教育専門全国紙・日本教育新聞がお届けする教育ニュースサイトです。

少子化時代の大学 将来像を議論

12面記事

pick-up

 少子化時代の大学の将来像を議論している中央教育審議会の特別部会が、質の向上に向けた卒業認定の厳格化や、財務状況の厳しい大学への撤退を促す方針を固めている。今後も入学者の減少が避けられない中、大学の再編と地方における高等教育へのアクセスの確保をどのように図るのか。大きな課題が残されている。

再編支援やアクセス確保
高校の変化に対応した入試の推進も

 文科省の推計によると、少子化で大学進学者数は現在の約63万人から2040年には約51万人になる見通しで、大学の経営環境は一層厳しさを増している。
 中教審の大学分科会は昨年11月に「高等教育の在り方に関する特別部会」(部会長=永田恭介・筑波大学長)を設け、将来像を議論してきた。
 6月に公表した中間まとめ案は、少子化社会を支えるために「知の総和」を増やしていくことが求められるとして、高等教育の今後の方向性を提示。議論を深めていくべき事項を

 (1)教育研究の質の高度化
 (2)高等教育全体の規模の適正化
 (3)高等教育へのアクセス確保

 ―の三つに整理した。
 質の高度化については、文理横断教育などによる教育内容・方法の改善と、厳格な成績評価や卒業認定による「出口の質保証」を進める。高校までの学びの変化に対応した総合的な入試を推進していくことも掲げた。
 規模の適正化については大学の再編・統合の推進とともに縮小・撤退の支援を提示。定員を満たしていない大学や財務状況が厳しい大学を統合する場合の罰則を緩和することなどを求めた。統合により定員が超過しても補助金を削減しないといった特例措置を検討するとみられる。
 経営が困難な大学の縮小や撤退を促す一方で、地方における高等教育へのアクセスの確保も求めている。
 地理的観点からは、地域ごとの志願情報を収集し、実態を踏まえた連携・再編計画を各大学が立てられるよう支援する。経済的には、修学支援新制度などの教育費負担の支援策を高校生に早期から知ってもらうこととした。
 新たな学生確保への考え方も示した。「18歳で入学してくる日本人学生を中心とした教育体制という考え方を改め、年齢や国籍を問わない幅広い学生が集まる多様性を実現する」ことを掲げ、留学生や社会人の受け入れ促進とオンライン授業の活用を提案した。

高まる危機感 具体策望む声

 大学の再編が中教審で議論されたのは今回が初めてではない。平成30年にまとめた答申「2040年に向けた高等教育のグランドデザイン」(グランドデザイン答申)だ。
 答申では大学進学者数の減少推計を示し、規模の適正化について検討は求めたが、具体策は「国立大学の一法人複数大学制の導入」などにとどまり、大学の再編・統合や撤退に切り込むことは見送った。
 だが、18歳人口の減少が急速に進み、今後、募集停止や経営破綻になる大学が出てくることが想定される中、今回の特別部会では委員の危機感は高まっている。
 6月28日に開かれた中教審の特別部会。委員から、グランドデザイン答申で掲げた改革が進んでいない現状への反省を進め、偏差値ではない「大学ランキング」の導入を求める意見や、厳格な成績評価の導入によって卒業管理を徹底するよう求める意見が上がった。
 こうした声に永田部会長は賛同し、「これまでは各大学のプライドと見識でやってきたが、それでは済まない。必要なのはマインドではなく施策と法律だ。今回もまた変わらなければ、ここにいる人は全員責任を取らなければいけない」と口調を強めた。

pick-up

連載