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自ら描くキャリアデザイン 働きながら学べるメディア授業で、教員のキャリアアップを支援!

12面記事

企画特集

 令和の日本型教育は、すべての子どもたちの可能性を引き出し、これからの変化の激しい社会を生き抜く力を育成することを目指している。そのためには教員も時代の変化に対応して資質能力を高めていく必要があり、それが自身のキャリア形成にとっても重要になっている。ここでは、メディア授業によって学び続ける教員を支援する、大学通信制による免許取得の魅力を紹介する。

高い専門性や幅広い知識・技能が求められている

 社会の在り方が劇的に変化する時代を迎え、これからの教員には常に学び続ける姿勢を持ち、特定の分野で高い専門性を有することや、義務教育9年間を見通した指導が行える資質能力を備えることが求められている。また、働き方改革を実現する業務の効率化に向けては、副校長・教頭の職務を補完できるミドルリーダーの育成が急務となっており、教員自身のキャリア形成にとっても、幅広い知識・技能を身に付けることが必要になっている。
 こうした中、現職教員が働きながら多様な教科・校種の免許を取得できる「大学通信教育」は、小中両免許等の複数免許取得や、不足する高校「情報」科の専科教員など、教職経験を考慮した免許状併用の促進に、より一層重要な役割を担うようになっている。
 文科省では、そんな「令和の日本型教育」を担う教員に求められる資質能力について、従来の指導力に加えて次の点が重要になると示している。

 (1)ICTを活用した指導力=オンライン教材やデジタル教科書を使いこなせる、1人1台端末を活用した授業を設計・実行できる。
 (2)個別最適な学びを支援できる力=児童生徒一人ひとりの理解度や興味・関心に合わせた指導ができる、ポートフォリオを活用した学習評価ができる。
 (3)探究的な学習を促進できる力=主体的な学びを促す授業を設計・実行できる、問題解決能力や論理的思考力を育成できる。

 このほか、生徒の将来のキャリア形成を支援できる、悩みや相談に寄り添える、教職員同士や保護者、地域の方と連携して協働できるなどの力を求めている。また、その上では教員自身が新しい知識や指導方法を常に学び続ける、自主的・継続的な学びを実行できることが不可欠としている。

明確な目標を持ってチャレンジする

 このような教員の資質能力の向上が期待される中で、めざす将来像に向かってモチベーションを持って学び、自らキャリアデザインを描いていけるように、職責、経験及び適性に応じて身に付けるべき資質を明確化した指標や研修体制を再構築する自治体も現れている。特に近年では、全国的に大量退職・大量採用の影響により経験の浅い教員が増加する中で、教育課程・授業方法の改革への対応を図るため、教員の資質能力の向上に係る新たな体制の構築が急務となっているからだ。
 文科省も今年度から、教員不足の解消に向けて、教員の仕事の価値ややりがいを地域社会全体に発信したり、外部人材によるリスキリング研修を強化したりする「大学・民間企業等と連携した教師の人材確保強化推進事業」をスタートさせた。また、教員のキャリア形成の一つとして、公立小中学校に若手教員への指導や助言を担う新たなポストを新設する方針も固めた。校長ら管理職を補佐する主幹教諭と一般の教諭の間に位置付け、給与も増額する意向だ。
 もちろん、教員自身が資質能力を高める、キャリアアップを図るには、学校外の研修に参加したり、民間企業で研鑽を積んだりするなど、他にもさまざまな道がある。大切なのは、自分がどのようなキャリアを築きたいのか、どのようなスキルを身につけたいのかを考えて、その目標に向かってチャレンジしていくことにある。

大学通信教育で上位・複数免許の取得を

 その中で、教員が目標を持って学び続けるための最も身近な手段の一つが、上位・他教科、隣接教科など、新たな教員免許状を取得することだ。なぜなら現在、小学校においては系統的な指導により中学校への円滑な接続を図るとともに、高学年では教科指導の専門性を持った教科担任制が進められている。また、中学校の専科教員が小学校で指導するなど、小中学校の連携促進も一層求められている。
 加えて、高校でも情報や地理・歴史・公民、英語など専科教員が不足している。特に「情報」は、将来不足するといわれているIT人材の裾野拡大につなげることを目的に、2025年1月の大学入学共通テストから新設教科として追加されるなど、カリキュラムの文理融合化が進む中で、ますます重要な教科となっている。
 また、「特別支援学級」に通う児童数は10年間で2倍に急増しているが、特別支援学校教諭免許状を保有している教員は、小学校教員で約7%、中学校教員も2%程度と少ないのが実態だ。こうした中で、例えば東京都では特別支援学校教諭免許状を保有する教員、新たに免許状を保有した教員を積極的に活用していくことを挙げている。
 すなわち、これらの免許を取得することが指導力や専門性を高めることだけでなく、自身のキャリアアップにおいても優位に働くことになるからにほかならない。
 このように複数の免許を持つことは、教員は異なる教科や学校種での教育機会を持つことができ、キャリアの選択肢が広がる。つまり、教員はより多くの教育環境で活躍することが可能になる。事実、教員の異動・採用においては、小・中両免許保有者や複数免許状所持者が優遇されるケースが起きており、特定の分野での高い専門性や小中を通貫したスキルを備えることがキャリアアップに不可欠となっているからだ。しかも、これらで備えた豊富な知識は、その指導を受ける児童生徒にとっても有益となる。
 そして、こうした多様な教科・校種の免許を、現職教員が働きながら取得できる機会を提供しているのが「大学通信教育」だ。

実務経験を活かして新しい免許を取得できる

 「大学通信教育」は、向学心を持ちながらも、地理的、時間的制約などがあって、その実現に困難を伴う人たちの期待に応えようとする正規の大学教育課程である。通信教育課程で取得できる教員免許は普通免許状で、小、中、高、特別支援学校、幼稚園教諭、養護教諭、栄養教諭の免許状があり、それぞれ専修、1種、2種に分かれている。
 免許状取得の代表的なものとしては、

 (1)新たに教員免許状を取得する場合
 (2)現在持っている免許状を上位の免許状に上進させる場合
 (3)現在持っている免許状を基にして同校種の他の教科の免許状を取得する場合
 (4)教職経験を有する者が隣接校種免許状を取得する場合

 の4つがある。近年では「幼保連携型認定こども園」における「幼稚園教諭免許状」と「保育士資格」の両免許取得の場としても活用されている。
 その大きな特徴となるオンデマンド型とリアルタイム型両方のオンラインを活用したメディア授業は、長年にわたる試行錯誤や独自のガイドラインなどで質保証を高めてきた経緯があり、現在では卒業に必要な単位数=124単位すべてを「メディアを利用して行う授業(インターネット等)」で修得することが可能になっている。
 したがって、働きながらでも、自分のペースで学習を進めることができることから、時間的制約がある教員でもキャリアの発展に必要な資格を取得することが可能だ。
 また、すでに教員としての実務経験がある場合、その経験を活かして新しい免許を取得することができるのも魅力の一つだ。例えば、高校の免許(専修または一種)のみ取得している人が中学の免許も取得する場合は、高校の実務経験3年+新たな単位習得(9単位)によって、隣接する中学校の同一教科、または関連教科の二種免許が取得できる。あるいは、中学校の普通免許状を持つ教員が小学校の免許を取得する際、実務経験と追加の単位取得で資格を得ることができる。

個別化・個性化教育が進む中で

 社会の変化に伴い、教育内容も刻々と進化している。とりわけ、多様性を受け入れる個別化・個性化教育の重要性が指摘される中、次の学習指導要領ではGIGA端末&クラウド活用を核とした教育のデータ利用がさらに推進されるだけでなく、子ども一人一人の特性や学習進度、学習到達度等に応じた指導方法がますます問われるようになる。そうした点からも、大学通信教育を通じて最新の教育方法や理論を学ぶことは、教員自身の可能性を広げる一つの魅力的な手段になるはずだ。

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