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みんなが「話せる」学校 対話で学びと挑戦の土壌を創る

18面記事

書評

吉村 春美 著
「関係性の質」に着目、実践校も紹介

 教育の質の向上や目の前の課題に組織として向き合うとき、目を向けるべきは「関係性の質」であると本書は主張する。「関係性」とは教員同士、教員と子どもや保護者、子ども同士、子どもと保護者などとの人間関係の在り方のこと。その質は心理的な安心・安全な環境づくりや対話の実現によって向上する。
 例えば教員であれば、本音で物を言ってもいいような心理的安心・安全な環境を確保し、経験年数の差、教育観、児童観など「観」の違いがあったとしても、対話を通して、互いを受け入れる集団へと変貌できる。
 第1~4章、第6章が理論編に当たる。教員の「ウェルビーイング」を尊重しつつ、新たな学びを創り、挑戦する学校となるために、なぜ「対話」が必要なのかを解説する。
 読者によっては、こうした考えは受容できても、多忙な現場にそんな時間がどこにあるのかと、疑問を抱く方もいるだろう。
 「対話」を取り入れた京都市立葵小、沖縄県うるま市立中原小、埼玉県戸田市立美女木小の実践(第5章)が参考になる。なじみのない取り組みに教員の不安なども垣間見えつつ、授業での対話の時間や、教員研修として工夫しながら対話の在り方、本質を学ぶことによって、教員同士の関わり、子どもや保護者の言動に変化が生じていく様を目の当たりにできる。
 管理職やミドルリーダーは、ぜひ一読してほしい。
(2200円 学事出版)
(矢)

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