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クロスロード 交差する視点(2)想像と実践、創造力に昇華を

10面記事

教科・指導

鹿野 利春 京都精華大学教授 デジタル人材共創連盟代表理事

 これからの時代は、肉体労働はロボットが、思考・判断・表現のかなりの部分は人工知能が代替するようになる。人工知能を搭載したロボットも普通に使われるようになってきた。人間には、それらを使って世の中に価値あるものを創り続けることが求められるだろう。また、技術の進展は止まることを知らないので、生成AIが普及し始めた頃のように、数カ月といった短いスパンで人間に求められる力は変化し続けていく。
 その中で、必要とされるのは単純な知識ではなく、ルーティン化された技能でもない。問題を発見する力、チームを形成する力、解決に向けて進む力、将来を見通す力といった、知恵を含む総合的な人間力になるのではないだろうか。
 だが、そういったものは、どうやったら育つのか。知識を詰め込む教育では実現できないことは明らかであり、想像力を育む教育だけでも不十分である。
 一つの希望は、総合的な学習(探究)の時間の活用にある。各教科等で身に付けた力を総合して、問題を発見・解決する過程で学ぶことだ。想像力と実践力を「創造力」に昇華することである。社会人は大部分、問題の発見・解決といった舞台で人間の持つ総合力で勝負している。
 教育の現場としては、必要な資質・能力が教科等の学習で育つように、それが総合的な学習(探究)の時間で、総合的な人間力として結実するように学校全体でカリキュラム・マネジメントを推進することが必要である。
 そのためには、ICTの活用や個別最適、協働的学習といったレベルではなく、総合的な人間力をどうやって育てていくかといった、一段上の視点から教育全体を見直すことを行わなければならない。その際は「ふるさとで子どもたちが豊かに暮らす」ことや「平和で持続可能な世界を形成する」といった視点も大切である。教育には、このような視点と5年後、10年後の社会を見据えた目標の設定が重要である。

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