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新版 思考の整理学

16面記事

書評

外山 滋比古 著
記録し「醗酵」させる勧め

 本書は40年前に刊行され、今回、新版として東大特別講義を加え再編集された。今求められる教育改革にも通じ、新鮮にすら映る。
 思考を整理するとはどういうことか。それを見事な比喩や偉人の言葉を引用し表現している。抽象的なことを具体的なことに置き換え説明しているので理解しやすい。例えば、麦がたくさんあるだけではビールはできず、アルコールへと変化させる酵素の働きが必要。そしてすぐに良いビールができるものではなく、「寝させる」ことが大事。思考を生み出すにも「寝させる」ことが必要という。ただし、その時にも思考の整理として、記録することを勧めている。思考を整理し、さらなる高みへ精選していくヒントが得られ読者の学びに参考になる。メモから手帳へ、ノートからメタ・ノートへ書き留め整理する。著者の言葉で言うと「醗酵」させるのだ。借り物ではなく自分の頭で考え、自分の言葉で語る力について改めて考えさせられた。
 冒頭でグライダーと飛行機の特性を取り上げ、人間に必要な能力を論じる。グライダーは風任せ。自分では飛べない。新しい文化の創造に不可欠なのは飛行機能力。学校教育はこの能力を伸ばす努力をしているかという問いに、どう答えられるだろう。
 時代が変わっても読み継がれロングセラーとなっている理由が分かる。いつまでも色あせない書だ。
(693円 筑摩書房(ちくま文庫))
(藤本 鈴香・京都市総合教育センター指導室研修主事)

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