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子どもは罰から学ばない

16面記事

書評

ポール・ディックス 著 森本 幸代 訳
冷静で安定感ある教師の対応

 「あなたは先週先生から何回褒められましたか?」。これは、4章「安定感のある大人」の「生徒指導を考える上で参考になる子どもへの質問」の一つである。果たして読者の目の前の子どもたちはどう回答するであろう。
 本書は、生徒指導の大半が「懲罰式」であったイギリスにおいて、14歳のときに生徒指導が変わればみんなが幸せになるという確信を持ち、いつか学校の生徒指導を変えてやると誓った著者が、実際に行った困難校の立て直しの事例を基に、教師の行動がどうあるべきか、その意図は何かを述べたもの。
 子どもの反抗的な態度に反応しない、子どもを責めるのではなく話を聞く、自分が話をするのではなく子どもの話を聞くなど、本書には否定的な感情を完全に排除し感情をコントロールした、プロとして合理的な対応をする教師の具体の姿がある。著者は、安定感を持って子どもと向き合うことができれば、冷静な判断が可能であり、感情を使うのは褒めるときであるという。
 子どもの力を信じ、子どもたちを伸ばしたいという願いを持ちながらも、良好な関係性を築けず、思い悩んでいる教員は若手だけではない。「大人が変われば子どもも変わる」。本書には、子どもへの関わり方を見直し、すぐにでも取り組みたい実践がきっとある。
(2310円 東洋館出版社)
(伊藤 敏子・仙台市教育局学びの連携推進室主任)

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