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学習に困難のある子 医師の「診断」ではなく、教員の「工夫」で楽しく

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中邑氏の研究室で気づきを共有

 東京大学先端科学技術研究センターの「LEARN」は6月8日、教員と子どものための体験型イベント「電脳人間プログラム」を開催した。LEARNは、同センターの個別最適な学び寄付研究部門が実施する教育プロジェクトで、全ての人を包摂する社会を目指す。この日は「東大駒場リサーチキャンパス公開2024」に合わせ、教員と子ども、保護者それぞれに向けたイベントを同時に開催。このうち教員と子どもはプログラムの途中で合流し、共に課題に取り組んだ。(日本教育新聞特別記者・小出弓弥)

「苦手を補う」から「能力の強化」へ
 教員向けプログラムには全国から12人の教員が参加した。テーマは、学習に苦手感のある子どもがICT機器を活用することで、苦手を乗り越えるだけでなく、能力を「強化(エンハンスメント)」すること。根底には、学習の困り感に対し、医師の「診断・治療モデル」を重視する教育現場への問題提起がある。
 LEARNシニアリサーチフェローの中邑賢龍さんはセミナーで「本当に効果的なICTとは何か、実践で使えるテクニックを探りたい」と話し、「空気を読まず、よいアイディアは教育現場で実行したい」と語り掛けた。
 ICT研修では一人一台のタブレットを活用。カメラ機能を使って文章の読み込み、翻訳、読み上げができる「グーグルレンズ」や、再生速度を調整する「ボイスメモ」等を試した。その後、子どもたちと合流し、4チームに分かれて課題に挑戦した。

スマートフォン一台で、あれもこれも
 子どもたちは一人一台のスマートフォンを手に使い方を確認。「これでもう電脳人間になった!」「今日が初めてのおつかいで少し不安」など、反応はさまざまだ。
 LEARNのスタッフが早口で一度だけ課題を伝える。子どもたちはボイスメモで録音し、再生速度を調整しながら聞き取った。課題は、キャンパス近くのコンビニへ買い物に行き、指定の時刻までに戻ること。買う物は「遠くからやってきた食べ物」で、予算は一人500円─。教員は見守り役に徹し、子どもからの求めがない限り支援してはならない。
 子どもたちはマップ機能を使い、コンビニまでの経路を確認した。店に到着すると、時間に余裕がないチームは帰り時刻を知らせるタイマーをセット。食品探しでは、原材料の記載欄をグーグルレンズで読み込み、読み上げ機能を使って原産国を確認した。「少しでも遠くの国の食べ物を見つけたい!」。子どもたちの目が輝く。思い思いの品を手に、500円以内で収まるよう電卓機能で確認し、いざレジへ。全員無事、買い物を達成した。約束の時刻に遅れるチームもあったが、研究室でサンドイッチやお菓子を頬張る顔は、皆どこか誇らし気だ。

ミッションの最中。子どもの様子をそっと見守る

「共有こそすべて」
 最後に教員らの気づきを共有した。「大人は待つのが一番辛い」「子どもたちの特性を愛しく感じた」など思いの丈を語り合う。大阪府で小学校教諭を務める友弘一志さんは、「特性などの情報がないまま臨んだが、見ているうちに見立てが分かってきた」「今の学校の良さも残しつつ、これからは僕たちが自信を持って『病院ではなく、私たちに任せてください』と言える環境調整の仕方があると、希望を感じた」。
 「(教員の皆さんと)直接話せる場がやっと持てた。共有こそ全て。そうすると、みんな楽しい」と中邑さん。LEARNは今年度、教員・子ども・保護者向けのICT活用イベント「魔法のプロジェクト」を全国7カ所でソフトバンクと共同開催する。詳細=https://maho-prj.org

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