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インクルーシブな教育と社会 はじめて学ぶ人のための15章

16面記事

書評

原田 琢也・伊藤 駿 編著
歴史・課題検証、打開の糸口に

 本書は、副題からも分かるように、インクルーシブ教育に関する初学者向けの教科書として、それぞれの分野の新進気鋭の研究者が執筆しており、インクルーシブな教育・社会の実現を切望する強い情熱を感じる。第Ⅰ部では、インクルージョンの歴史を俯瞰している。第Ⅱ部では、教育や社会から排除されるマイノリティーに焦点を当てている。第Ⅲ部では、諸外国におけるインクルーシブ教育の歴史と現状・課題を検証し、日本が学ぶべきことを提言している。第Ⅳ部では、われわれが、日々の着実な実践の蓄積によって実現すべきインクルーシブな授業・学校、コミュニティーと社会のつくり方について述べている。
 日本において「インクルーシブ」という用語が耳目を集めるようになったのは、2012年の中央教育審議会「共生社会の形成に向けたインクルーシブ教育システム構築のための特別支援教育の推進(報告)」以降である。本書の一貫したテーマは、インクルーシブな教育とはどのような教育で、またどのような社会にしていくのかということ。その根幹にあるのが、「障害のあるなしにかかわらず、すべての子どもを学校から排除しない」教育・社会の実現を目指すという考え方である。
 本書は、子どもたちへの対応に戸惑いを隠せず、苦悩している多くの教員や学校にとって、打開策創出の大きな手掛かりを与えるものと期待される。
(3080円 ミネルヴァ書房)
(新藤 久典・元国立音楽大学教授)

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