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未来の教育を創造するへき地・小規模校の教育力

16面記事

書評

北海道教育大学へき地・小規模校教育研究センター 監修 川前 あゆみ・玉井 康之 編著
遠隔での体育授業例も紹介

 日本全体で急速に少子化が進む中、へき地・小規模校における教育の特性をプラスに生かした教育活動・教育力の可能性を体系的に捉えようとする試みである。
 へき地に関する本などの中には、出身者から見るとへき地を過度に美化していると感じるものもあるが、本書では多年にわたる実践や研究の成果を基に、生かすべき強みや課題などが説得力ある形で示されている。
 世界がやがて直面する課題に一足先に向き合い、克服に挑む国を「課題先進国」というのに倣えば、へき地・小規模校は、いわば日本の教育の「課題先進校」である。
 本書でも指摘しているように、ICTの活用、地域との連携、多様性の包摂、チーム学校などの近年の政策の方向性は、へき地・小規模校の特性とも重なり合う。
 本書では、ICTの活用や遠隔合同授業、教員養成などについての考察の他、難しいと思われがちな体育の遠隔による授業の実践例なども紹介されており、大変参考になる。
 また、これまで各校での単独保有が原則とされている理科の備品を教育委員会などで保有し貸し出す仕組みなども提案されている。学校も行政も、社会の現実に対応して「標準的な学校」観を変える必要がある。その中身となる新しい教育を創り出す担い手として、「課題先進校」は大きな役割を担っている。
(2530円 学事出版)
(浅田 和伸・長崎県立大学学長)

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