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こどもを野に放て! AI時代に活きる知性の育て方

16面記事

書評

養老 孟司・中村 桂子・池澤 夏樹 著 春山 慶彦 編著
「自然観」巡る識者との対談集

 何と味わい深い言葉だろうか。本のタイトルからも心引かれる。本書は、編著者の春山氏が3人の識者との対談をまとめたもの。名前を見ても、本書への期待は高まるが、内容は期待以上であった。
 編著者は「私たち人類がどう生きるのか、一人ひとりの生き方が切実に問われている。人類に問われているものが自然観」という。起業するにも自然観が必須で、営利を貪るような生業であってはならない。未来を創る子どもたちには机上で獲得した知識だけで勝負するのではなく、リアルな感覚や感性で裏打ちされた知性を働かせてほしいと願う。そのためには、著者らのいう自然経験を通して培われた自然観が不可欠であることを痛感させられた。
 「教養とは人の心がわかること。自分の体験から積み上げてものを考えること」「人間は『自然の一部として生きている生きもの』であることからはじめる」「自分のいのちのときめきに素直に生きる」など、心に留めておきたい言葉があふれている。
 春山氏は日本最大の登山アプリの開発者。自然に対する造詣の深さは想像に難くないが、3人の識者からの話の引き出し方が見事である。話題を広げ、内容を深め、巧みに読者に自然環境と身体の接点を持つ重要性を考えさせてくれる。令和時代の教育改革についても一石を投じているように感じた。読み応え十分な一冊。
(1760円 集英社)
(藤本 鈴香・京都市総合教育センター指導室研修主事)

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