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NPOカタリバがみんなと作った 不登校 親子のための教科書

18面記事

書評

今村 久美 著
学校を「行きたい場所」にするヒントも

 不登校の子どもに悩む保護者にとっては救いになり、現在、不登校を選択しているあなたの心も軽くなる希望の書である。
 「認定NPO法人カタリバ」は、10年前から島根県雲南市と「雲南市教育支援センターおんせんキャンパス」を立ち上げた。不登校の子どもたちをサポートするため、タテ関係(親や教師)でもヨコ関係(友達)でもない「ナナメの関係」で伴走する。ここを皮切りに、東京都足立区「アダチベース」、メタバース上の教育支援センター「room―K」を設け、利害関係のない立ち位置から対話的なつながりを積み重ね成果を上げている。
 不登校を当事者だけの問題ではなく社会問題として捉え、多様な視点で本質に迫っていく。
 著者は「”学校に行けない子どもたち”の学習権は、まだ、全く保証されていない状況」と現状を厳しく指摘しながらも、学校に行く・行かないは本質的な問題ではないとし、自立を目指して学び続けられる環境があること、その子が安心して生きていくための土台をつくることが大事だという。前出のメタバースについても「あなたが今いるどんな場所からも扉は開ける」と熱い思いを込める。
 本書を貫く理念は子どもを真ん中に置いた教育の在り方だ。実は学校が、全ての子にとって「行かなければいけない場」ではなくて「行きたい場所」になるヒントが本書の随所にちりばめられている。
(1540円 ダイヤモンド社)
(田畑 栄一・元埼玉県公立小学校校長)

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