教員のウェルビーイングを高める 学校の「働きやすさ・働きがい」改革
14面記事露口 健司 著
負担軽減に偏った改革論議に一石
「働きやすさ」を重視する時短や負担軽減は働き方改革の一つの手段のはずなのに、これが唯一の目的とされることにより、逆に管理職は疲弊し、若手教員の職能成長を阻むものになっていないか。
働き方改革の本来の目的は、長時間勤務の是正による教師の健康保持だけでなく、教員自らが人間性や自らの授業磨き、子どもたちへのより良い教育を実現することである。
著者は、働き方改革の推進を評価する指標として、「働きやすさ」の指標だけでなく、「働きがい」の指標として、「ワーク・エンゲイジメント」「職能開発機会」等を提案する。
「ワーク・エンゲイジメント」とは、「仕事に関連するポジティブで充実した心理状態」のことで、それを測る質問としては、例えば「自分の仕事に誇りを感じる」などがある。それらを活用した著者による調査結果は「働きがい」の向上は教員個人の努力だけでなく、自律・裁量・公正等を担保した魅力ある職場づくりの必要性を示唆する。そのためにも第6章「働きがい改革」のワークショップ型校内研修は参考になる。
「働きがいの維持向上のためにはどうすればよいか」をテーマとし対話することは、職場の働きがい改革を進めるだけでなく、その基盤となる職場の信頼関係が醸成される。本書を活用しての実践を勧める。
(2530円 教育開発研究所)
(重森 栄理・広島県教育委員会乳幼児教育・生涯学習担当部長(兼)参与)