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熱中症・脱水症のサインと応急処置 「暑さ指数」の活用と水分補給の徹底を

12面記事

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梅雨明け前から暑さに慣らす
横堀 將司 日本医科大学付属病院 高度救命救急センター長

 ここ数年で気になっているのは、夏の初めに熱中症を起こす子どもが多くなっていることです。つまり、梅雨明けから気温が急激に上がり始めますが、そこに体が付いてこれない。ですから、学校の指導者は梅雨に入る前から、子どもたちの体に負担をかけないレベルで、汗を少しかく程度の運動を心がけ、暑さに慣らしてあげるとよいでしょう。暑さに慣れることを暑熱順化(しょねつじゅんか)といいますが、低い体温でも汗をかきやすくなり、体の熱が逃げやすくなって体温の上昇を防ぐようになります。
 一方、気温が上がって日照時間が長くなる時期は、必ず熱中症計などで「暑さ指数(WBGT)」を確認し、気候条件に応じて教育活動を行うことがとても重要になります。特に子どもは脱水症になりやすいため、しっかりと水分を摂らせることが肝心で、その際ミネラルや塩分を同時に補給できるスポーツドリンクや経口補水液を利用することも有効です。
 一番やってはならないのが、ジュースや清涼飲料水など糖分が高い飲料を多く飲ませてしまうことです。脱水を助長してしまうため、それだけは注意してほしい点になります。加えて、子どもには喉が渇いたらいつでも水分を摂らせる、またはそうした習慣を身に付けさせてあげることが大事になるため、授業中でも持参した水筒で飲水できるような配慮をしてあげて欲しいと思います。
 
暑熱環境から救うことが大事

 夏場の体育・スポーツ活動では、より一層「暑さ指数」に応じて活動制限を図ることが重要になります。中でも、熱中症警戒アラートが発表された日は、屋外の運動は原則中止にしてください。
 熱中症・脱水症の初期症状は、頭痛やめまい、足がつるところから始まり、そのあとにぼうーっとして声かけしても反応が鈍くなるなどに悪化していきます。先生方が子どもを見守る上では、そのサインを見逃さないようにすることです。また、子どもは自分が脱水になっていることに気づかない場合も多いので注意が必要です。例えば尿が出なかったり、尿が麦茶のような濃い色になったりしているとすでに脱水になっているので、その点もしっかりと確認するようにしてください。
 こうした症状が起きた場合は、すぐに暑熱環境から救うことが最優先になります。その上で、自分で水分補給できるようなら、水と塩分などの電解質水や経口補水液を飲ませてください。吐き気やおう吐、体がグッタリして力が入らないなどの症状が出たときは、必ず病院を受診させてください。反応がなくなるなどもっとひどくなった場合は、ただちに救急車を呼んでください。
 熱中症への処置としては、太い血管が存在する首回り、脇の下、足の付け根などにアイスバックや氷を使って血液を冷やすクーリングを行います。さらに、体を扇いだり、服をゆるめたりするなど風通しのいい状態にしてあげます。

この夏を乗り切るために

 熱中症・脱水症は予防法を知っていれば、発生そのものや症状の悪化を未然に防ぐことができます。したがって、特にスポーツを指導する先生は、熱中症のⅠ度(軽症)、Ⅱ度(中等症)、Ⅲ度(重症)がどういう状態であるかと、それぞれの応急処置の仕方を知っておくことが必要だと考えます。
 近年では猛暑日が年々増えています。また、いままで涼しかった地域でも猛暑日が観測されるようになっています。ぜひ、先生方には「暑さ指数」を活用して危険度を把握するとともに、養護教諭とも協力して子どもの体調管理に努め、この夏を乗り切ってほしいと思います。

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