「おとうとのねじまきパン ずっとむかし、満州という国であったこと」
19面記事高橋うらら 著
幼い頃、家族で「満蒙開拓団」として満州に渡り、戦後、引き揚げた「和子さん」の体験談をまとめたものだ。
日本が敗戦すると、当時の首都「新京」では、中国人による暴動やソ連兵による暴行などが起きたという。
しばらくすると、和子さんが住んでいる地域でも暴動が起きるようになり、各地を転々とせざるを得なくなった。
こうした暮らしの中、5歳の弟が病気になるが薬も食べ物もない。あと1週間もつかどうかというとき、弟から「おさとうが、食べたい」と言われ、危険を覚悟し、食料を探しにいく。何とか見つけたのは砂糖をまぶした「ねじまきパン」。二口だけ食べた3日後に、息を引き取ることになった。戦争の悲惨さと、そこで生きた人の物語を実感できる一冊。
(1760円 合同出版)
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