週案簿をスプレッドシートで管理 情報を自動で共有して無駄な時間を省く
9面記事鈴木智裕 主幹教諭
練馬区立豊玉小学校
学校の働き方改革を推進する上でカギになるのは、校務のICT活用だ。練馬区立豊玉小学校(氣田眞由美校長)では週案簿を紙からデジタルに置き換えて共有、教員がPCからいつでも確認できるようにしており、自動計算で入力の手間を少なくし校務の効率アップに成功している。ICTを活用してどのような1日を過ごしているのかについて、教務主任の鈴木智裕主幹教諭に話を聞いた。
常に最新情報を共有
朝、職員室に入ると目に飛び込んでくるのが天井近くの高い位置に設置された2カ所のサイネージだ。ここでは今日と明日の予定、時間割、特別教室の使用状況、その週の行事や会議予定、教員からの連絡事項、天気予報などが一覧できる。これまで黒板に書いていたものがすべてデジタル上に移動した形だ。ここで大まかに1日の動きを確認する。
席に着くと教員用のタブレット端末を開き、Googleにログインする。すると各自の端末に自動配信されている「本日の予定」が確認できる。それを受けて、各自が連絡や返事をしたい事項があればチャットツールでやりとりができる。予定の変更があれば、スプレッドシートに入力することで、その内容がすぐにサイネージに反映される。職員室にいない教員もタブレットがあればこのやりとりを同じタイミングで見ることができるため、変更した予定の共有に漏れがなくなった。
担任の連絡漏れを防ぐ学級掲示板
予定が一覧できる職員室のサイネージ
連絡事項を確認できたら教室へ向かう。鈴木主幹教諭のクラスでは学級掲示板を大型ディスプレイに表示し子どもも便利に使っている。職員室のサイネージをアレンジした形で、クラスの時間割、今日と明日の連絡、持ち物など必要項目が出力されている。授業で電子黒板を用いるとき以外はいつでも表示しているので、黒板に記入しなくても連絡が共有でき、教室での動きの省力化につながった。教員の連絡漏れや子どもの忘れ物が減ったという。
「後から口頭で伝えようと思いながら、つい忘れてしまうことがなくなった。例えば『明日は書写の準備が必要です』と、分かった時点で入力しておけば私も子どももいつでも確認できる。結果として忘れ物が減った」と、鈴木主幹教諭は話す。
クラス掲示板はGoogleにログインした子どもも閲覧、入力できる。日直や学習のめあて、係や委員からのお知らせなどを子どもも入力している。自宅に帰っても端末があれば明日の時間割や持ち物、宿題などが確認できるようになった。欠席した子どもや保護者にも便利だ。
表示内容は子どもたちの意見や希望も取り入れながら改善してきた。毎日変わる「今日は何の日」は子どもたちのリクエストに応じたもの。ネット上から引用して自動表示される仕組みを利用している。子どもたちもICTで学校生活を工夫する楽しさを味わうことができたと同時に、鈴木主幹教諭自身の働き方の効率アップにつながった。
昨年度の試行を経て、今年度は、学級掲示板のデジタル化に興味を示した教員が実際に利用を開始し、専科教員とも連携を取りながら持ち物や連絡などを子どもたちが常に確認できるようになったという。さらに、昇降口にディスプレイを設置して学校全体の掲示版も作っていく計画だ。
週案簿は一度入力すれば自動計算・共有
放課後は教材づくりや、スプレッドシートの修正・改善など、校務の新しい仕組みづくりを行う時間に時間を充てているという。デジタル上で情報共有がされ、確認の打ち合わせや、伝言のために教員を探し回る必要がなくなった。職員会議もペーパーレス化が進み、資料を印刷し配布する時間は削減できている。ただこのように校務の仕組みが進んでも鈴木主幹教諭は、教員同士お互いに声をかけ合っていくことをこれまでと同じように大切にしていきたいという。
同校の校務の仕組みは、複雑なことをしているように見えるが、起点になるのは「週案簿」のデジタル化だ。教務主任の鈴木主幹教諭が年間の行事予定をスプレッドシート上に作成し、各クラスの週案テンプレートを作成する。学級担任、専科教諭など授業を受け持つそれぞれが単元や内容を書き込めば、週案ができあがる共同編集機能を活用した。スプレッドシートの関数を活用し時数計算も自動で行う。これを教職員用のサイネージ、子ども用のクラス掲示板と、分けて自動出力するよう設定してあるので、何か変更があったときでも1箇所の修正で月予定・週予定・サイネージの表示などが自動的に更新される。
これまで表計算ソフトで作成・ローカルネットワークで保存していた週案簿を、クラウド上に移すことで確認が格段に容易になった。行事の変更や時間割の変更など最新の情報も常に共有でき、休暇を取る教員が出たときにもクラスのサポート体制を作りやすくなったという。
鈴木主幹教諭は週案簿のクラウド化のメリットと導入のコツを次のように語る。「うまく機能させるには学校全体で使っていくことが大事。導入時は戸惑いもあるため管理職のリーダーシップと職員の粘り強い努力は不可欠だ。学校全体が校務のクラウド化に移行できれば、確実に校務の負担が軽減するとともに、その時間を短縮し、子どもと向き合える時間を生み出すことができる」と語った。