クラスみんなが成長する! 対応上手な先生の3つの言葉かけ
14面記事樋口 万太郎 編著・松山 康成 監修・大谷 舞・金子 真弓・小谷 宗・後藤 菜緒・西村 祐太 著
場面ごとに具体的な事例示す
書名の「対応上手」という言葉からは、その場を何とかうまく切り抜けるハウツーの言葉の掛け方、という印象を受けるかもしれないが、本書はそうではない。教師がとかく陥りやすい子どもに対する解釈に「その見方ちょっと待って!」とストップをかけ、「見方のポイント」を掲げて冷静なヒントを示す。さまざまな事例に対する個々の簡潔、的確な分析と考察が、見事で素晴らしい。
その後、極めて具体的な「うまくいく言葉かけ」を三つ示して、それぞれの理由や根拠を述べている。いずれも、長い経験と実践に裏付けられた分かりやすい文章と内容である。初心者向けであると同時に、ベテランの実践者にも十分に参考になる上質の解説で、時々はっとさせられる。今の子どもたちは、時代や世相の影響によって、一昔前の子どもの在り方とは異なった言動を見せることがしばしばである。本書は、そのような結果的、現象的な言動の背後にある「原因」や「背景」への考察に基づいて、これからのその子の「行動の予想」をし、「過去と現在の比較」に着目させ、子どもへの「うまくいく言葉かけ」を示して見せる。深く重い納得に導く力がある。
本書が提起している「言葉かけ」は、単に一人の担任教師への手引きの域にとどまらない。サークルや、校内研修のテキストとしても十分に役立つレベルの内容となっている。
(1980円 学陽書房)
(野口 芳宏・植草学園大学名誉教授)