学習者主体の「学びの質」を保証する 2030年の学校教育を見据えた子どもと教師の学びの姿とは?
14面記事中田 正弘・坂田 哲人・町支 大祐 著
出口から構想する学びのプロセス
いま日本の学校教育は大きな転換点を迎えている。コロナ禍における学校休業は一人一人の学習の保障という問題を浮上させ、前倒しで実施された情報端末の配備と活用は、ICT教育と自立した学習者の育成という課題を突き付けた。
戦後教育は、学力の考え方や授業の在り方などを何度も転換してきた。直近の2021年の中央教育審議会答申は、誰一人取り残すことなく育成する「令和の日本型学校教育」を掲げ、「個別最適な学び」と「協働的な学び」の実現を提言した。現状は、「教師が教え、理解させる」一斉集団型学習から、「子どもが自ら主体的に学ぶ」学習に脱しつつある途上だ。
本書では、フィンランドにおける「選択と参加」や「自己評価能力の育成」、オランダの教科横断型のテーマ学習や「自律分散型学習モデル」などの教育実践を紹介。「個と集団」という課題をどうするか、日本の教育の強みや可能性も見えてくる。
これからの教師の役割は、学習環境のデザインや学習のフィードバック、能動的な学びへのかじ取りなどに変わる。学びの質を高めるために教師も力を磨くことが必要であり、組織マネジメントやリーダーシップ開発を指摘している。
著者らは「学びの質の保証」という出口の視点から学びのプロセスの充実を提案しており、2030年の教育を展望し考えることができる。
(2310円 東洋館出版社)
(大澤 正子・元公立小学校校長)