夢の実現に向けた未来への設計図を 第17回「小学生『夢をかなえる』作文コンクール」
7面記事主催=特定非営利活動法人=NPO法人 日本FP協会
共催=日本教育新聞社
後援=文部科学省、金融庁、金融広報中央委員会、全国都道府県教育委員会連合会、日本PTA全国協議会、全国地方新聞社連合会、(株)Gakken、日本FP学会主催
特定非営利活動法人=NPO法人 日本FP協会が主催する、第17回「小学生『夢をかなえる』作文コンクール」(共催=日本教育新聞社、後援=文部科学省、金融庁、全国都道府県教育委員会連合会ほか)の入賞作品が最終審査会を経てこのほど決まった。全国から寄せられた作品総数は2,154作品(学校応募73校、中・低学年460作品、高学年1,694作品)で、厳正な第1次選考(196作品が通過)、第2次選考(各部門24作品が通過)を経て、個人賞として中・低学年部門と高学年部門にそれぞれ最優秀賞1名、優秀賞と奨励賞各10名、学校賞として最優秀学校賞1校と優秀学校賞10校が選ばれた。加えて両部門の個人賞に特別賞1名、学校賞に特別学校賞1校も選出された。最優秀賞の受賞者と審査員長・北俊夫氏(総合初等教育研究所参与)のコメントのほかに受賞作品全文とその「ライフプランシート」を掲載する。
キャリア教育の機会として
「小学生『夢をかなえる』作文コンクール」は、日本FP協会がキャリア教育の充実を願い、全国の小学生を対象に毎年開催している。同コンクールは、課題図書『夢をかなえる―FPはライフプランのサポーター―』を読み、ライフプランニングの重要性や大切さを学びながら、将来の夢を具体的に描いてもらうことを目的としている。
今回「中・低学年の部」で最優秀賞に輝いたのは、東京都・筑波大学附属小学校4年・水谷真悠さんの「夢は『宇宙飛行士』」。宇宙飛行士への憧れから始まり、さまざまな仕事内容と、そのための専門的な知識や技術の習得について詳細に調べ上げた点が評価を集めた。
水谷さんは、「ライフプランシートは具体的に書くように工夫しました。すぐに達成できるような目標ではなく、手の届かないような高い目標も書きました」と話しており、作文については最初に『新13歳のハローワーク』という本を読んでまず働く事の意味を考えたという。今後の抱負としてまずは、学校の行事と勉強を頑張りたいと話す。
なお、筑波大学附属小学校は「学校賞」最優秀学校賞も受賞した。長年コンクールへの応募を継続して行っている同校の山田誠教諭は、10年前の4年生が、作文を書くに際し真剣に考え、「将来医者になりたい」という夢をもった。その子は、それ以来ずっと「医者になりたい」という夢を持ち続け、現在2浪をしながら国立大の医学部を目指し頑張っている。卒業以来8年ぶりにその子の話を聞き改めて、小学生の時に将来の夢について具体的に考える機会を与えることは、子どもにとって大変有意義なことだと思ったという。
「高学年の部」で最優秀賞に輝いたのは、個人応募の富山県・射水市立小杉小学校6年・梶原光莉さん「笑顔で生きたいと思ってもらうために」。夢は海外で活躍する義肢装具士だ。「小耳症」を患う兄を思いやり、義耳について調べていくうちに、現代の医療技術では回復できない人たちに、生きる希望を与えられる義肢装具士になりたいと思うようになったという。「夢への動機について心が動かされるような記述で、目標に説得力がある」さらに「海外途上国の貧困障害者にまで目を向けている点も素晴らしい」と高く評価された。
梶原さんは作文で工夫した点について、どのような仕事があるのかをしっかり調べていく中で、その仕事をしている人の「やりがい」についても調べるようにしたという。また、「中学生になれば、できる事も増えてくると思うので、さまざまな体験にチャレンジしていきたいです」と今後への意気込みを語った。
「高学年の部」最優秀賞 梶原光莉さん
キャリア教育の大切な視点
今回・第17回のコンクールも世相を反映した作品が数多く寄せられた。子どもたちが夢に選ぶ職業が多様化・専門化している事もその表れであったが、同時に周囲の人や社会への関心の高まりも感じられた。
審査員長の北俊夫氏は、「夢に描いている職業に必要な資質・能力についても関心を持っており、周囲の人たち、社会への意識や関心、知識も高まっている。『人のため、世のために頑張りたい』という想いを書いている作品が多く、これはキャリア教育の大切な視点だ」と、コンクールを総括した。
個人賞
中・低学年の部 最優秀賞
夢は「宇宙飛行士」
筑波大学附属小学校 4年 水谷 真悠
水谷さんの「ライフプランシート」
習い事の帰り道、夜空にきれいな月が見えた日は、一日のごほうびをもらった気分になる。幼稚園の頃から、天体望遠鏡で月や惑星を見ることが好きだった。近所のプラネタリウムへ行ったり、星空観測会にも参加した。そんな私を見て、お母さんが宇宙飛行士の山崎直子さんの講演会に連れて行ってくれた。「どうしたら宇宙飛行士になれますか。」と、一番に手を挙げて質問したことは今でも覚えている。私にとって宇宙飛行士になるという夢は、これからの人生をがんばる原動力だ。
宇宙飛行士の仕事は、船外活動を行うだけでなく、ISSに滞在して宇宙環境を利用した実験や、ISSや日本実験棟「きぼう」のシステム管理、修理・保全等の運用を行うことだ。実験は専門性が高く、難病に効く薬の開発や病気の原因の解明につながることもある。地上の私たちの生活をより良くすることに関係していて、宇宙飛行士になるためには、自分の得意とする専門的な知識や技術を身につける必要があると思った。また、多国籍チームで作業を行うので、英語やロシア語の語学力はもちろん、異文化を理解して尊重すること、そして、日本文化を伝えるコミュニケーション能力も必要になると思っている。異常時には、仲間と協力しながら問題を解決し、冷静に判断して行動できる力も必要だ。
今の私にできることは、人の話や世界のニュースに興味を持ち、自分がどの分野で世の中の役に立てるのかを考えること。そして、その勉強ができる海外の大学で自分と同じ志を持った様々な国の人たちと学び、多くの知識と経験を積みたいと思っている。卒業後は、JAXAか自分の専門分野を生かせる機関で実務経験を積みながら宇宙飛行士の募集があった時に、自信を持って応募できるように努力を続けたい。これからの月探査をはじめとする宇宙開発を担い、危機的状況の地球環境を守るのは私たちだ。地球も時間もお金も無限にはない。一分一秒を大切にしたいと思う。
個人賞
高学年の部 最優秀賞
笑顔で生きたいと思ってもらうために
射水市立小杉小学校 6年 梶原 光莉
梶原さんの「ライフプランシート」
「外耳道形成手術で右耳に穴を作り、こ膜を皮ふ移植。一方で、ぎょうざのような形の右耳を切除。次に胸の骨から切り出したなん骨の一部を、左耳の大きさに合わせて右耳の形に加工し、右耳の位置に埋め込む。そして耳のなん骨がうまく皮ふになじんだ一年後に、二回目の手術で周囲の皮ふを切り、右耳として立ち上げる」
これが三歳年上のお兄ちゃんがお医者さんから言われた右耳の治療方法です。しかし成功する確率は高くないそうです。お兄ちゃんは生まれつき右耳が奇形で、小耳症と呼ばれる病気のため右穴がふさがり右耳は聞こえません。でも左耳は聞こえるため、日常は普通に生活できています。お兄ちゃんは右耳を手術しないことを決め、一生懸命勉強して、将来は医者になろうと頑張っています。私の自慢のお兄ちゃんです。しかし、時折、鏡の前で泣いているのを私は知っています。小耳症の人たちはどうやって生き抜いているのか、インターネットや新聞で調べたら、義耳という本物そっくりのオーダーメイドの耳を装着するという対処法があることを知りました。透けるような色で毛細血管にまでこだわった作りの耳で、現在は技術がものすごく進歩しているそうです。義耳を作っている会社は国内にいくつもあり、義指や義手、人工乳房まで本物そっくりに作り上げていて、それを利用している人たちは、自信をとり戻して日常を明るく生きていることが分かってきました。私は“これだ”と思いました。現代の医療技術で回復できない人たちに生きる希望を与えられる義肢装具士になりたいと思うようになりました。
さらに深く調べてみると、発展途上国の障害者の人たちは、こうした装具自体を手に入れることができず、苦しみ困っているそうです。だから私は、英語だけでなく中国語やポルトガル語なども学んで、世界で困っている大人や子どものために、義手や義足などを作ってあげて、“生きたい”と思ってもらえるように手助けしたいです。そのためにも、今、自分ができる学校の勉強をしっかりして、一歩一歩、夢の職業に向かって歩みを進めていきたいと思っています。お兄ちゃんのように世界中で困っている人たちに笑顔になってもらうために。
第17回 「小学生『夢をかなえる』作文コンクール」受賞者・受賞校一覧
【個人賞】―中・低学年の部―(50音順・敬称略)
・最優秀賞(1点)
水谷 真悠(東京都・筑波大学附属小学校4年)
・優秀賞(10点)
大西 真幌 (東京都・筑波大学附属小学校3年)
大場 悠人 (東京都・筑波大学附属小学校3年)
熊崎 稜士 (東京都・練馬区立大泉西小学校3年)
小礒 道允 (茨城県・開智望小学校3年)
齋藤 真州 (徳島県・徳島文理小学校4年)
柴崎 美月 (東京都・筑波大学附属小学校4年)
田中 都和 (埼玉県・さいたま市立大砂土小学校4年)
牧野 奈実 (徳島県・徳島文理小学校4年)
三浦 颯人 (宮城県・聖ドミニコ学院小学校1年)
山岡 佳乃 (東京都・筑波大学附属小学校3年)
・特別賞(1点)
下村 彩乃 (奈良県・葛城市立新庄北小学校4年)
・奨励賞(10点)
五十嵐 陽士 (東京都・筑波大学附属小学校3年)
泉 咲希 (徳島県・徳島文理小学校4年)
井上 奈南 (東京都・筑波大学附属小学校3年)
烏野 莉央 (東京都・筑波大学附属小学校4年)
川田 葵生 (徳島県・徳島文理小学校4年)
五ノ井 櫻子 (福島県・会津坂下町立坂下南小学校1年)
古市 悠馬 (東京都・筑波大学附属小学校4年)
古川 結愛 (徳島県・徳島文理小学校4年)
松本 恵美奈 (東京都・筑波大学附属小学校4年)
山谷 紗良 (東京都・筑波大学附属小学校3年)
【個人賞】―高学年の部―(50音順・敬称略)
・最優秀賞(1点)
梶原 光莉(富山県・射水市立小杉小学校6年)
・優秀賞(10点)
池田 寧花 (新潟県・上越教育大学附属小学校5年)
植木 悠晴 (東京都・筑波大学附属小学校5年)
北川 裟那 (東京都・筑波大学附属小学校5年)
境 優里 (埼玉県・星野学園小学校6年)
高原 美咲 (岡山県・就実小学校6年)
田中 宗知 (東京都・筑波大学附属小学校5年)
平澤 智規 (千葉県・昭和学院小学校6年)
星野 結樂 (埼玉県・星野学園小学校6年)
松崎 汐音 (千葉県・日出学園小学校6年)
向井 千紘 (鹿児島県・鹿児島大学教育学部附属小学校6年)
・特別賞(1点)
陳 愛佳 (千葉県・日出学園小学校6年)
・奨励賞(10点)
石渡 玲衣 (千葉県・日出学園小学校6年)
黒澤 栞奈 (東京都・筑波大学附属小学校5年)
坂本 絢音 (東京都・筑波大学附属小学校5年)
清水 絵莉菜 (千葉県・日出学園小学校6年)
田畑 佳穏 (鹿児島県・鹿児島大学教育学部附属小学校6年)
長野 光瑛 (東京都・筑波大学附属小学校5年)
西 咲月 (埼玉県・星野学園小学校6年)
針谷 琉生 (宮城県・聖ドミニコ学院小学校6年)
古川 みお (愛知県・名古屋市立北一社小学校6年)
八木橋 葵衣 (埼玉県・春日部市立備後小学校6年)
【学校賞】 ※都道府県別
・最優秀学校賞(1校)
東京都・筑波大学附属小学校
・優秀学校賞(10校)
宮城県・聖ドミニコ学院小学校
埼玉県・春日部市立備後小学校
埼玉県・星野学園小学校
千葉県・日出学園小学校
東京都・練馬区立大泉西小学校
岐阜県・岐阜市立鶉小学校
愛知県・名古屋市立北一社小学校
徳島県・徳島文理小学校
福岡県・福岡市立板付北小学校
鹿児島県・鹿児島大学教育学部附属小学校
・特別学校賞(1校)
山形県・鶴岡市立大泉小学校