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断水続く避難所の生活をLPガスで支援

12面記事

企画特集

LPガス設備と給湯器、給水所を設置

災害に強いLPガスを使って給湯、暖房、給水を実現

 令和6年能登半島地震で甚大な被害に見舞われた石川県七尾市では、今も市内広域で断水が続いている。こうした中、2015年に設立したNPO法人「LPガス災害対応コンソーシアム」(代表=株式会社田島 代表取締役 田島裕之)の会員企業である株式会社田島・富士瓦斯株式会社・東京プロパンガス株式会社と、I・T・O株式会社で結成した災害支援チームは、非常用生活用水浄化装置の開発会社のユーティリティ・ソリューソンズ、浄水器メーカーのクリタック株式会社、簡易シャワーメーカーの株式会社タニモトと連携し避難所となっている七尾市立小丸山小学校でLPガスによる給湯、暖房、給水支援を行った。

プールの水を浄化して給湯、生活用水を確保

 今回の避難所に対する支援ではLPガスを活用し、ガス発電機、非常用生活用水浄化装置などによって、電気、ガス、生活用水などのインフラの仮復旧を図る計画だったが、災害支援チームの現地到着時にはすでに電気が復旧しており、約130人の避難者が暖房の整備された教室棟で避難生活を送っていた。食料、飲料水は支援物資により多量に確保されていたが、震災直後から続く断水により生活用水が使えないことによって、不自由な生活環境は続いており、衛生面も懸念された。
 そこで今回の災害支援ではLPガス設備、給湯・給水設備、非常用生活用水浄化装置を設置し、シャワーと生活用水を供給することに主眼を置いた。
 非常用生活用水浄化装置に使う水源は、消防の許可を得て学校のプール貯水を利用。本装置で不純物を取り除いた水をガス給湯器に送り、仮設シャワーと仮設手洗い場に供給(2トン/h供給可能)した。
 同校は自衛隊による入浴支援も来ておらず、着の身着のままで過ごしてきた避難者にとっては、シャワーを利用することができ、”まさに生き返った気持ちがした”と喜ばれたほか、感染症抑止に欠かせない手指洗浄や清掃などに使う生活用水に困ることもなくなった。

LPガスを使った災害支援のイメージ

暖房設備のない体育館にガスストーブも設置

 学校の授業が近く再開するため、避難者は教室から暖房設備のない体育館への移動が進められていた。寒冷期における体育館の床は凍えるほどの寒さになるが、避難所生活自体は当分解消される見込みはない。そのため、軽くて持ち運びが容易なLPガスコンポジット容器を用意し、ガスストーブで暖を取れるようにした。
 灯油ストーブが数台配備されていたが、それでは広い体育館全体を温めるには不十分だ。しかも、燃料に使う灯油はガソリンスタンドまで買いに行く必要があり、高齢者が中心の避難所で継続的に使用するには負担が大きいという事情もあった。その点、LPガスは全国のガス事業者による配達文化が根付いているため、道路さえ寸断されてなければ全国から支援が届きやすく、インフラの復旧が早いのが強みとなっている。
 今回の被災地では、LPガス事業者による支援や復旧活動がいち早く行われており、LPガスを備蓄した災害対応型バルクシステムを使って非常用発電機を稼働させ、食事づくりや風呂の湯沸かしに活用している施設も報告されている。

インフラ復旧に優位性の高いLPガス燃料

 さらに、避難所の生活環境の向上として、1月28日から洗濯機を設置。断水により洗濯ができない状況も続いていたが、プールの貯水を利用し、生活用水浄化装置から供給した水を使って洗濯ができるようになった。その後にはガス式乾燥機も設置された。
 これらを踏まえても、災害発生時から一定期間にわたる避難者生活を維持するためには、電気、ガス、水のインフラが必要不可欠であり、それをすべて稼働させるにはLPガスが非常に優位性の高い燃料であることが認識できる。
 LPガスは分散型エネルギーであり、復旧も早くバックアップが図りやすく、災害時におけるエネルギー供給の最後の砦に位置付けられている。近年ではイニシャルコスト面で評価の高いEHP(電気式空調)ではなく、トータルコスト面、防災面で優位性が高いGHP(ガス式空調)が評価され、学校体育館空調にGHPを選択する自治体が増加傾向である。停電対策の必要性やエネルギーの分散化も見据えた上で、電気、LPガス、都市ガスのメリットとデメリットを吟味し最善の選択をする必要がある。

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