日本最大の教育専門全国紙・日本教育新聞がお届けする教育ニュースサイトです。

つくる◆教えない『教える授業』 教師としての“腕”をみがく

17面記事

書評

佐久間 勝彦 著
「知を磨き合う場」と教師の関わり

 公立中学校社会科教諭経験を持ち、現在、私立大学の理事長、学長を務める著者の令和2年1月から令和5年5月までのエッセーや論考を「【遠い国からやってきた旅人】として迎える子どもたち」から「Society5・0時代になっても教育は変わらない」「『令和の日本型学校教育』改革は子どもの知を磨くか」「斎藤喜博に学ぶ」の全4章にまとめた。
 本文約230ページにはYOASOBIやチコちゃんなど多種多彩な人物、約170人が登場。それぞれの名言などが引かれ、著者の思いに仮託し伝えられていく。「『授業をつくる』という実践者としての視点が底流している」と著者が述べる通り、ストレートに教育を扱っていないエッセーなども、教育に携わる読者には響くものがあるのではないか。
 中でも、登場回数の多いのが斎藤喜博や林竹二である。先達の教育実践、教育哲学は、著者が考える「教師としての”腕”をみがく」ための根幹に連なる。
 「友達や教師との往還をくり返しながら知を磨き合う場」を「授業」とする著者は、端末を活用した「個別最適な学び」や深まりのない「協働学習」と見る令和の日本型学校教育改革に危機感を抱く。改革を担うのは「教材を多面・多層・多角度から研究したうえで授業に臨み、子どもたちの思考を的確に活かして授業を組織化する教師である」という主張にうなずく読者も多いだろう。
(一莖書房 2200円)
(吹)

書評

連載