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教師のひと言の重さ ー死刑囚の魂の回心

19面記事

書評

黒澤 英典 著
教職の使命と魅力、事例と論考で

 著者は、定時制高校に勤務しながら大学で教育哲学等を学び、その後、長年にわたり大学で教育学・教育史などを教え、日本教師教育学会の創設発起人として参画された経歴もお持ちの方である。
 不遇な環境に生まれ育った死刑囚、島秋人(筆名)が、生涯でただ一度だけ人に褒められた経験を思い出し、躊躇しながら中学時代の恩師に宛てて手紙を書いた。そこから恩師夫妻との心の交流が始まり、33歳で処刑されるまでの7年の間に、多くの人の心を震わせる歌を遺した。
 この話に胸を熱くした教育関係者は多いだろう。評者もその一人だ。教師のひと言が、時には人間の生きざまを根本から変える重みを持つ。
 本書ではこの島秋人やペスタロッチーをはじめ、著者が教育実践者、研究者として大きな影響を受けた教育者や生徒の話、また教師教育などについて述べた講演や原稿を基に、今日の教育、特に教師教育の課題などに対してメッセージを送る内容となっている。その思いを受け止めたい。
 著者が「生涯を支えている言葉」として挙げるのが、フランスの文学者ルイ・アラゴンの《学ぶことは心に誠実を刻むこと 教えることは共に希望を語ること》である。いつの時代も、教育は「希望を語る」ものであり続けねばならない。
(1650円 人言洞)
(浅田 和伸・長崎県立大学学長)

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