沖縄修学旅行の魅力を再発見 沖縄修学旅行モニターツアーレポート
15面記事旧海軍司令部壕が語る戦争の悲惨を体感する参加者
自然、文化、歴史、平和、産業とさまざまな視点の学習テーマに取り組むことができ、修学旅行の定番でもある沖縄――。今後もより良い学びの旅を提供することを目的に、一般財団法人沖縄観光コンベンションビューローが主催で「沖縄修学旅行モニターツアー」を1月27日と28日の1泊2日で開催。沖縄修学旅行を検討している学校関係者と修学旅行関係団体が参加した。ここでは、同モニターツアーの様子と施設の概要を紹介する。
沖縄独自の体験で探究学習を深める
今回のモニターツアーの行程は、1日目に旧海軍司令部壕と道の駅かでなを見学。体験活動では、体験王国むら咲むらでの素焼きシーサー色付けと黒糖手作り体験。2日目は、マングローブカヤックの視察と国際交流型まちなかロゲイニングでの英語・異文化交流体験。また、学校交流プログラムとして興南中学校・高等学校アクト部による首里城ガイドを体験し、最後に同モニターツアー参加者との意見交換会を実施した。
従来の平和学習や自然体験に加え、国際交流や学校交流など沖縄修学旅行の魅力を再発見させる内容だ。
戦争の悲惨さと命の尊さを学ぶ
太平洋戦争で国内最大の地上戦が展開され、多くの民間人を巻き込んだ沖縄戦。この戦跡地として「旧海軍司令部壕」は平和学習の場として修学旅行生が多く訪れている。
見学の流れとしては、同館職員より、沖縄戦や旧海軍司令部壕について、当時の軍部の作戦や米軍が沖縄のどこに上陸したかを写真や地図を用い説明。その後、資料館と旧海軍司令部壕を見学する。
資料館では、銃器や軍服など壕内で発見された遺品や家族へ宛てた手紙など旧日本海軍についての資料を展示。旧海軍司令部壕では、現在、一般公開されている司令官室を中心に、約300メートルの区域を実際に歩くことができる。壕内は当時のまま残っており、戦争の悲惨さを伝える施設となっている。同館職員は「普段の生活の中で平和について考えるのは難しいことだと思う。旧海軍司令部壕での体験を通じて平和について考えるきっかけにしてほしい」と話した。
地元沖縄ならではの課題をテーマに
基地に隣接する唯一の道の駅で知られる「道の駅かでな」は、2022年4月に施設を増設リニューアル、2023年4月には展示室を完全リニューアルするなど、修学旅行の新たな平和学習施設として注目を集めている。展望所は、アメリカ空軍嘉手納基地の滑走路を見学できる。
一般社団法人嘉手納町観光協会では、基地概要説明と展望書ガイド、展示室ガイドの3部構成の平和学習を実施している。
参加者からは「沖縄基地問題について、テレビやメディアからの情報ではない、沖縄に住んでいる人の思いを聞くことができ、リアルな体験ができそう」と感想を述べた。
文化・歴史を体験し創造性や独創性を高める
体験王国むら咲むらでは、沖縄の文化や沖縄の黒糖の歴史を学ぶことを目的に、素焼きシーサー色付け体験と黒糖手作り体験を行った。
素焼きシーサー体験では、シーサーにアクリル絵の具を使用し、ドライヤーで乾燥させながら色付けを行う。見本のシーサーを見ながら、色を重ねてグラデーションを作る参加者もみられた。黒糖手作り体験では、さとうきびを絞り機にかけ、あらかじめ煮詰められている黒糖をかきまぜ固める体験を行った。
SDGsの学びを深める 自然を考えるきっかけに
比謝川に住む生物や植物の説明している様子
(株)ブルーフィールドが管理する嘉手納町比謝川自然体験センターは2022年4月に嘉手納町の恵まれた自然環境と独特の文化・風習・産業等の資源を有効に活用し、触れ合い活動の場にすることを目的にオープンした。同センターは、マングローブをはじめとした沖縄の自然を観察し楽しむマングローブカヤックといったアクティビティーやワークブックを用い遊歩道散策を行う自然観察SDGsプログラムを提供している。
プログラムは、ワークブックを使用し生き物の工夫や戦略を考え、自然環境や生物の多様性について探究し環境問題について考えを深めることができる。
また、(株)ブルーフィールドでは、沖縄戦上陸の地に船で訪れ、「過去と現代、未来の問題」について考える平和学習クルーズ&陸上プログラムも行っている。
ミッションを通じて新たな国際交流を体験
HelloWorld(株)は、アメリカンビレッジを舞台に「国際交流型まちなかロゲイニング」のプログラム体験を行った。同プログラムは、イングリッシュスピーカーとチームとなりミッションをクリアしながらスコアを競う探究型フィールドワーク。
参加者からは「生徒にとって良い体験になると思う」「英語が苦手な生徒も参加できる」といった声があがった。
首里城の歴史や文化を伝え沖縄の魅力をもっと身近に
首里城をガイドする興南アクト部
修学旅行生を対象とした首里城ガイドを行う興南中学校・高等学校のアクト部は、全員がガイド研修を受けた中学1年生から高校3年生までの生徒だ。首里城の歴史や文化の説明はもちろん、同世代ならではの交流を通し、修学旅行の思い出作りに貢献している。
ガイドでは、首里城の歴史や文化について各所で説明。時にはクイズを出しながら首里城を見学。中高生らしい沖縄地元トークもガイドの魅力の一つだ。
「首里城だけでなく、地元沖縄を良く知っていて、しっかり調べていることがわかる」「事前事後学習として、オンラインでアクト部とつないで交流したいと思った」「学校交流の取り組みに魅力を感じた」など参加者から感想があがった。
沖縄修学旅行の可能性と課題とは
同モニターツアーは最後に参加者による意見交換会を実施。沖縄修学旅行の可能性として「探究学習のテーマが豊富であること」「バスガイドや各施設の職員、まちなかロゲイニングのイングリッシュスピーカー、興南アクト部の生徒と関わり、人と人とのつながりが大事だと改めて気づかされた」などの感想があげられた。
課題としては、「物価高騰による費用面」「沖縄の魅力が伝わったが、全てをやることができないので費用と時間を考え組み立てていきたい」など意見や感想が飛び交った。