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宿題からの解放 子どもも親も学校も、そして社会も

14面記事

書評

丸山 啓史 著
教育の「当たり前」を見直す

 「宿題を通して、今の学校教育のあり方、社会のあり方を問い直す」とともに、すぐに宿題を全廃できない現状を踏まえて「肩の荷が軽くなるような工夫」を模索した。
 宿題に悩み、苦しむ子ども、保護者などの様子を「宿題に振りまわされて」(第1章)や「長時間労働の子どもたち」(第3章)で語り、「宿題は何のため?」(第2章)でその目的と問題点を検討する。宿題についての個別の対応の必要性を「子どもの多様性を考える」(第4章)で指摘し、「家庭の多様性を考える」(第5章)では実態の異なる家庭に宿題を押し付けないことを提起した。
 公立・私立・国立大附属小などの「ランドセル通学廃止」の取り組みから、その意義付けや効果を考察する「宿題をやめてみた」(第6章)は現状でもできる工夫の一つだろう。
 「宿題をどうする?」(第7章)は「宿題からの解放に向けて」を提言した。学童保育の充実や好きなように遊べる空間の確保などの「社会的支援」から、競争的環境の下での学力重視の社会構造、教師や大人たちの長時間労働、経済的に厳しい家庭への社会保障政策など「社会のあり方」の問い直しまで、幅広く示す。
 類書『宿題をめぐる神話』(アルフィー・コーン著、小欄令和4年2月28日付)も宿題全廃を提案したが、本書も「宿題」を当たり前とする教育の日常を見直す契機になる。
(1760円 かもがわ出版)
(矢)

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