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学校施設のZEB化 省エネ効果は?

13面記事

施設特集

窓からの熱流入・流出を抑える複層ガラス

 学校施設をZEB化(11面参照)すると、どれくらい省エネ効果があるのか―。文科省が4つの地域(北海道、⼭形、東京、沖縄)の小学校をモデルにZEB化改修した調査結果によれば、いずれの地域でも一次エネルギー消費量を半減できることが分かった。

光熱費の増加が自治体の負担に

 半数近くが建築後40年以上を経過している公立小中学校施設では、今後、長寿命化改修と併せてZEB化を推進することが求められている。建築年が古い建物は、外壁や屋根、窓など外皮の断熱・気密性能が低く、快適で健康的な室内環境を確保できず、エネルギーロスも大きいからだ。とりわけ、学校の校舎は他の建築物と比べても窓面積が大きいのが特徴であり、窓からの熱流出および流入によって夏の暑さや冬の寒さが厳しくなる傾向にある。
 その一方、学校施設で使用する一次エネルギー消費量は、普通教室等への空調設備の設置や各種情報機器の導入に加え、新型コロナウイルス感染症対策による換気対策等により増加している。しかも、ウクライナ危機を発端とした電気料金の高騰が続く中で、かさんだ光熱費を当初予算でまかなえなくなる自治体が相次いでいるなど、省エネ対策の重要性は日に日に増しているのだ。

ZEB化で一次エネルギー消費量が半減

 学校施設のエネルギー消費比率としては、空調が41%、照明・コンセントが36%を占めている。したがって、建物自体を断熱化することはもちろん、空調・照明設備の高効率化を図り、できるだけ光熱費を削減することが必要になっている。本調査は、こうした建物・設備を「省エネ仕様」と「ZEB Ready仕様」にした場合のシミュレーション結果となっている。
 例えば東京の小学校の場合、「省エネ仕様」では屋根・外壁を断熱化し窓は複層ガラスに、設備として電気モーター駆動型の空調と全熱交換器、LED照明を導入。「ZEB Ready仕様」では、より断熱性能を高めた断熱材や複層ガラス、高効率空調、LED照明を導入して検証。その結果、一次エネルギー消費量が「省エネ仕様」では3割減、「ZEB Ready仕様」では半減した。これは、気温差のある北海道や沖縄の学校でも、ほぼ同様の数値となっている。
 また、公立小中学校の屋内運動場の多くも築40年を経過しており、断熱性能が確保されていないため冷暖房効率が低いが、ここでも「省エネ仕様」にした場合は一次エネルギー消費量が半減したほか、寒冷地となる北海道や山形県ではそれ以上の省エネを実現する結果となった。

CO2排出量の削減にも大きな効果

 加えて、公立小中学校施設に起因するCO2排出量についても、本調査のワーキンググループが、将来シナリオを設定した上で2050年までのマクロ推計を行った結果からは、学校施設に求められる省エネ水準、かつ現在の整備量で推移した場合、2013年比で約7割のCO2排出量が削減される可能性が示された。
 こうしたことからも、CO2排出量をさらに削減するためには、学校施設のZEB化の一層の推進に加え、使用するエネルギーの脱炭素化なども含めて幅広い観点から努力する必要があるとしている。すなわち、それには教育委員会が⾸⻑部局との体制を構築し、しっかりとした⽬標設定を立て、計画的・効率的な整備を進めていくことが大切になる。

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