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一刀両断 実践者の視点から【第444回】

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人命が失われた場所と道徳

 硫黄島の空港や沖縄県の高速などの下には多くの遺骨があると言われる。怖がるわけではないが人が無念の非業の死を遂げた場合のいわゆる魂はどのように存在するのであろうか。
 青年が電車に飛び込む瞬間を目撃したことがある。急停車して電車の下で処理をしている。先程まで生きていた青年が姿を変え、その上に停車している電車に乗客は沈黙しながら行き場もなく乗っている光景が違和感となって焼きついた。
 今回脳梗塞で集中治療室にお世話になった。献身的な看護体制に感謝して御礼を述べた。大変な仕事ですねと話すと、「メンタルがやられるんですよ」と話してくれた。
 確かにこのベッドでもこの部屋でも苦しみ多くの方が亡くなっていったであろうし、気づくと隣の方が居ない事が気になり始めた。それを淡々と処理されるのだからメンタルはきつい。
 夜になると「看護師さん起こして」と朝まで叫ぶ声が聴こえて、その場に行くと既に起きている。すなわち認知能力が麻痺しているのである。
 こうした命の最前線に置かれた場合感覚をある意味意図的に麻痺させないと食事も喉を通らないと感じられる。
 羽田の滑走路運用再開の知らせは利用客には嬉しくとも、事故機を片付けて路面を数日で復旧させる技術と迅速性は想像を超える。人命を失ったことや命を守る為に必死になった人々への追悼や感謝は忘れてはならない。これも貴重な道徳教材として扱うべきものではないだろうか。
(おおくぼ・としき 千葉県内で公立小学校の教諭、教頭、校長を経て定年退職。再任用で新任校長育成担当。元千葉県教委任用室長、元主席指導主事)

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