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「個別最適な学び」と「協働的な学び」の一体的な充実を目指して

16面記事

書評

奈須 正裕 伏木 久始 編著
「子どもが主語」の学びへの提言

 「一人一人の子どもを主語にする学校教育」。今や教員なら誰もが知っているフレーズであろう。中央教育審議会答申「令和の日本型学校教育」が出されて3年がたとうとしているが、果たして授業が「子どもが主語」に変わっただろうか。
 多様な子どもを前にし、一斉指導の限界を感じている教員は少なくない。本書は、第1章「『令和の日本型学校教育』と一斉指導の原理的問題」に始まり、第16章「ICTが拓く個別最適な学びと協働的な学びの新たな地平」まで、専門性や立場が多様な15人の執筆者が、これからの時代に求められる実践を描き出すことに挑戦したもの。子どもたち一人一人が「違う」ことを前提として「すべての個性的な学習者にどう向き合うのか」という問題意識が共通しているという。
 第7章「個が自律的に学ぶ授業づくり」は単元内自由進度学習の実践。日本型学校教育では見られなかった、自立した学習者の姿に、そこまでできるのかと驚かされる。
 教室でよく耳にする「まだ終わっていない人も鉛筆を置いて」の何が問題なのか。「今から個別でやりましょう」「次は協働でやりましょう」の指示のどこに課題があるのか。
 その解を求めるべく「教える」システムで授業をデザインしてきた全ての教育関係者が手にすべき一冊である。
(2640円 北大路書房)
(伊藤 敏子・仙台市教育局学びの連携推進室主任)

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