李　大佑　著
熱い思いとユーモアあふれる自伝

　著者は、義務教育学校の教師。名前からも分かるように在日コリアン。本書は、在日コリアンとして生き、家族や友、恩師と出会い、教壇に立つ夢をかなえ、今も夢と希望を持ち、力強く生きる姿が自伝として描かれている。
　ユーモアセンスあふれる文章力に引き込まれ、まるで青春活劇を見ているかのように文字を追った。差別事象と向き合う場面でも、評者の狭小な考え方を軽々乗り越える言葉で語られる。それでいながら、胸の奥がちくちくするような切ない思いにさせられたり、つづられた言葉からほとばしる熱い思いに心躍らされたりした。とにかく感情曲線が揺さぶられ、脳が活性化させられ続けた。
　著者は、前向きに生きていく糧となる人との出会いを語る。特に「教師の一言の重み」に感じ入る。その一言が人生に勇気を与え生き方をも強くする。心したい。同時に、受け止めて力に変えていく著者の感性の豊かさに感銘を受けた。１５年の構想を経ての書。４０代を迎えた今だからこそ語られる文章であるならば、６０代を迎えたときにはどんな言葉がつづられるだろう。
　これからも多くの教え子と出会い、体当たりで、その熱い魂丸ごとで対峙していくであろう。「こんな先生に出会いたいな」と思わせられた。教育に携わる人や教師を目指す人にも薦めたい。マイノリティもマジョリティも関係なく手にしてほしい一冊。
（２２００円　明石書店）
（藤本　鈴香・京都市総合教育センター指導室研修主事）