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高校無償化で望めば教育を受けられる社会に

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特集 教員の知恵袋

 平成26年4月1日、『公立高等学校に係る授業料の不徴収及び高等学校等就学支援金の支給に関する法律』の一部を改正する法律が施行されたことにより、要件を満たす世帯の公立高校に通う生徒に対して、高等学校等就学支援金が給付されるようになりました。

 令和2年からは、国公立は年収910万円未満の世帯に対し、授業料相当額の就学支援金が支給されるようになりました。また、年収約590万円未満の世帯を対象として私立高校の平均授業料水準(39万6,000円)まで支援されるようになり、私立高校の授業料の実質無償化もスタートしました。

 文部科学省が実施した『学校基本調査/年次統計』によると令和4年の通信制含む高校進学率は98.8%でした。義務教育ではないものの、国民のほとんどが高校進学をする日本では、高校の授業料等に対するサポートはより重要視されます。

出典:文部科学省『公立高等学校に係る授業料の不徴収及び高等学校等就学支援金の支給に関する法律の一部を改正する法律の施行等について(通知)(平成26年3月25日)』『高校生等への修学支援』『令和2年4月から私立高校授業料実質無償化がスタート!』/e-Stat(政府統計の総合窓口)『学校基本調査/年次統計

高校無償化の目的

 高校無償化に対する取り組みの目的は、全ての意志ある高校生等が教育にかかる費用を心配することなく安心して勉学に打ち込める環境を作ることです。進学をするうえで必要となる授業料を支援することにより、家庭の教育費負担を軽減することを目指します。

 多様な教育機関での学びを支援することによって、生徒がさまざまな学習機会を広く選択できるようになると期待されています。

出典:文部科学省『公立高等学校の授業料無償化及び高等学校等就学支援金制度Q&A

現在の高校無償化制度

 現行している高校無償化制度の正式な名称は、“高等学校等就学支援金制度”です。この制度は、教育費負担軽減を図るための国による授業料支援の仕組みとして、平成26年4月より開始されました。国公私立問わず高等学校等に通う所得等要件を満たす世帯の生徒に対して支援金を支給しており、全国の約8割の生徒が利用しています。

出典:文部科学省『高等学校等就学支援金制度

受給資格

 平成26年度以降に高校等(高専、高等専修学校等を含む)に在学する日本国内に住所を有する方が対象です。

 ただし、次のいずれかに該当する方は対象外となっています。

 ・保護者等の所得について、年収目安約910万円以上の方
 ・高校等(修業年限が3年未満のものを除く)を卒業又は修了した方
 ・高校等に在学した期間が通算して36月(定時制・通信制等の場合は別途算定)を超えた方

 また、制度を利用するためには申請が必要です。支給には都道府県による審査があります。

出典:文部科学省『高等学校等就学支援金制度に関するQ&A

対象の学校種

 高校無償化の対象とされる学校種には以下が挙げられます。

 ・国公私立の高等学校(全日制、定時制、通信制)
 ・中等教育学校後期課程
 ・特別支援学校の高等部
 ・高等専門学校(1~3学年)
 ・専修学校(高等課程)
 ・専修学校の一般課程や各種学校のうち国家資格者養成課程に指定されている学校
 ・各種学校のうち一定の要件を満たす外国人学校

 ただし、以下にあてはまる場合は対象外です。

 ・高校等を既に卒業した生徒や3年(定時制・通信制は4年)を超えて在学している生徒
 ・専攻科、別科の生徒や科目履修生、聴講生
 ・一定の基準を超える収入がある世帯の生徒

出典:文部科学省『高等学校等就学支援金制度に関するQ&A

家計急変支援

 家庭の状況により、『家計急変支援』でもサポートを受けられる場合があります。家計急変支援は、保護者等が負傷・疾病で勤務ができず収入を得ることができなくなるなど、やむを得ない理由によって家計が急変した場合に授業料を支援する制度です。

 通常の就学支援金の対象にならない方や、現在受給していても支給限度額まで支給されていない方は、要件を満たす場合に家計急変支援の対象として就学支援金を受けられる可能性があります。

出典:文部科学省『高等学校等就学支援金制度(家計急変支援)

都道府県が行う私立高校生への修学支援事業

 国からの修学就学支援金制度以外にも、私立高校生への修学支援が各都道府県で行われています。都道府県の行う支援事業はそれぞれで条件が異なり、国の支援で足りない分を賄う場合や、所得の条件で支給がない場合に授業料の支援が行われるほか、入学料や施設設備費の補助など授業料以外の支援がある場合もあります。

 大阪府での私立高校の無償化や、所得制限のない支給に向けた動きは、さまざまな方面で注目を集めています。

出典:文部科学省『令和3年度 都道府県別 私立高校生(全日制)への修学支援事業

質の高い教育を受けられる社会実現のために

 少子化の原因として挙げられる子ども・子育てにかかる費用の経済的支援を強化する対策の一つとして、高等学校等就学支援金・高校生等奨学給付金の充実が挙げられます。

 また、高校無償化を進めるだけではなく、質の高い教育を受けられる社会を実現させるために幼児教育・保育の無償化や高等教育の修学支援制度などが進められています。令和6年度より、安心して子どもを産み育てられるための奨学金制度の改正も予定されており、さらなる保護者等への教育費負担の軽減が期待されます。

 ・学校における働き方改革
 ・教師の処遇改善
 ・学校の指導・運営体制の充実
 ・学校施設・設備の老朽化対策

 そのほか、上記に挙げられるような教育現場における課題の解決へ向けた取り組みを行うことで、質の高い教育のための環境整備につなげることが注目されています。

出典:文部科学省『(1)学校運営をめぐる現状と課題』『3.学校施設の現状・課題』『学校における働き方改革について

今後も注目される教育費負担の軽減

 高等学校等就学支援金制度により公立高校だけではなく私立高校の授業料が軽減されたことで、高校進学を望む生徒の選択肢を広げ、家庭の経済状況に関わらず学びの機会を得られるようになりました。国や都道府県の制度により高校無償化が進み、進学を希望するすべての生徒が高校へ進学し、学習できる社会体制は非常に画期的です。

 また、この制度は少子化対策としても重要な役割が期待されています。子育て世代の経済的負担を軽減することで、より安心して子どもを産み育てることのできる環境の整備も進んでいます。

 今後も、教育現場の改革や教師の処遇改善など、質の高い教育環境の構築が求められます。これらの取り組みは、日本の教育システムをさらに強化し、将来の世代にとってより良い学習環境を提供するための重要なステップといえます。

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