給食が教えてくれたこと 「最高の献立」を作る、ぼくは学校栄養士
12面記事松丸 奨 著
困難乗り越え 夢追い求める
この本はある熱血な学校栄養士の物語だ。食べることが苦手な少年が、自校の栄養士との出会いをきっかけに学校給食に魅了され、栄養士の道を志し、やがて「全国学校給食甲子園」で優勝する。
一見サクセスストーリーのようだが、著者の人生は順風満帆ではない。小学校時代にいじめを受け、教室に居場所がなくなり、仕方なく給食室の裏に通い始めた。そこで給食に興味を持ち、高校卒業後は栄養士の専門学校に入学する。
しかし専門学校も職場も栄養士といえば女性、ジェンダーギャップに直面する。最初は学校ではなく、病院に勤務するが、小児病棟の子どもに接するうちに学校栄養士を目指すことになる。
小学校勤務後も、男性栄養士であることから悪戦苦闘の日々が続く。しかし、理解ある管理職や子どもたちに支えられ、自分の居場所を見いだす。また、特別支援学級や不登校児童との交流も描かれる。
著者が給食から教わったのは、「人は、毎日食べるものでできている」「食べることで、人生は変わる」ということだ。
給食をテーマにした人気テレビドラマがある。映画化もされた。その中で主人公の生徒が「皆で同じ時に同じものを食べる特別な時間」と語り、主人公の教師は「給食は文化」と訴える。ドラマや本書のように給食には、人を動かす何かがある。
(1540円 くもん出版)
(中村 豊・公益社団法人日本教育会事務局長)