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教室の適切な湿度管理 学校に安心感

12面記事

施設特集

教室の天井に整備された「てんまい加湿器」

東京都立府中東高等学校
すべての教室に天井埋め込み式加湿器を整備

 「文武不岐」を掲げる東京都立府中東高等学校(府中市)は、創立50周年を目前に控えた2020年度に待望の新校舎を竣工。「都内でも屈指の充実した教育環境を活用し、生徒一人一人の可能性を最大限に伸ばす教育に取り組んでいます」と小林和人校長は語る。
 快適な学習空間を支える機能の1つが、特別教室を含む全教室(48部屋)にエアコン等の空調設備とあわせて整備されたウエットマスター(株)の滴下浸透気化式加湿器「てんまい加湿器」だ。
 空気の乾燥が進む冬季は喉の粘膜の防御機能が低下することでさまざまな感染症のリスクが高まるため、加湿によって室内湿度を50~60%に保つ必要がある。加えて、気密性の高い学校の教室では、夏場でも冷房によって湿度が低下することで「かくれ脱水」を引き起こす要因となる。
 だが、従来の空調機組込型の加湿器では、加湿器の運転が空調機の運転に左右されることから、加湿不足になることもあった。その点、同機は単独運転かつ室内空気に直接加湿する方式のため、教室全体をムラなく確実に加湿できるのが特長。天井付近の無効な熱を水の気化蒸発に利用することから、省エネにもつながる。
 また、「天井埋め込み式で音も静か。加湿器が設置されていることに気づいていない生徒も多いのでは」と話すように、美観性に優れ、強運転でも40dBと学習を妨げることもない。しかも、快適な運用に不可欠なカビや臭気などを防いでくれる乾燥運転機能を搭載しているほか、定期的な点検が必要となる加湿材の取り外しが1分以内で可能など、メンテナンス性も大幅に向上している。

快適な学習環境へ運用&衛生両面で後押し

 加湿器の運転は各室に設置されたリモコンスイッチを使用する。基本的な操作はON・OFFと強・弱のみと簡単なため、校長自身は、冬季の朝は校長室に入ったときにスイッチを押すのがルーティンとなっている。また、各教室の運用については「教員や保健委員が気になるときに稼働させています」と鷲ノ上亮一副校長は答える。その上で、室内の湿度を感知し、制御・調整するヒューミディスタット(湿度調節器)機能が搭載されていることを挙げ、「教員が意識しなくても常に快適な学習環境が保たれるのは、生徒の体調管理に気を配る学校にとって安心感があります」と指摘する。
 肌感覚で直接伝わる冷暖房空調機と異なり、加湿器自体の効果は実感しにくいもの。それでも、「確かに新校舎になってからは、職員室にいて喉がいがらっぽく感じたことはありませんね」と副校長。さらに、「以前に学校でよく使っていた家庭用の加湿器では教室の隅々まで加湿することは難しいうえ、毎日の水の補充や定期的なフィルター清掃など教員の手間が大変でした」と振り返る。すなわち本加湿器の整備は、教室の乾燥対策として不可欠な運用と衛生の両面において改善を促したといえる。
 全国の学校では2学期を迎えてから、新型コロナウイルスとインフルエンザの同時流行が進み、今も学級閉鎖が相次いでいる。しかし、感染症を引き起こすウイルスが勢いを強めるのはこれからの季節だ。その意味でも教室内では適切な加湿によって湿度を一定に保ち、集団感染リスクを防いでいくことが大事になる。

操作が簡単な加湿器のリモコンスイッチ

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