重要視されるK-12の教育課程と一貫教育
トレンド世界では多様な教育課程が展開されています。なかでもアメリカや英語圏ではK-12と呼ばれる教育期間が用いられています。日本では、平成10年の学校教育法改正に伴い一貫教育校の増加がみられます。この記事では、K-12の概要と日本の一貫教育の背景・必要性について考察します。
K-12とは
K-12とは、幼稚園から始まり高等学校を卒業するまでの義務教育及び義務教育後中等教育期間のことを表します。日本に置き換えると、幼稚園の年長から高校3年生までの期間に該当します。
アメリカのK-12制度の特徴として、以下のことが挙げられます。
・ 公立の無償教育
・ アカデミックイヤー(年度)は9月~8月
・ アクセラレーション(飛び級)制度
世界の教育課程の多様性
教育は国や地域によって多様であり、その多様性はK-12の教育課程にも反映されています。一部の国では、世界基準となる教育システムを目指して、初等中等教育の質を上げるために教育改革が行われています。
日本でもグローバル化の進展に対応した教育課程の必要性が高まり、多文化理解や国際協力の観点から、より広い視野で教育を受ける機会を提供することが求められています。
各国の義務教育課程と無償教育の比較
日本は義務教育(小・中学校)の9年間を含めて、6-3-3制ですが、他国では以下のようになっています。
・ イギリス:11年間(6-5-2制)
・ フランス:10年間(5-4-3制)
・ フィンランド:9年間(6-3-3制)
・ 韓国:9年間(6-3-3制)
日本では法律に基づき、義務教育である国公立の小中学校は無償とされています。また、高校においては所得などの要件を満たす世帯の生徒に対して“高等学校就学支援金”の給付を行っています。
世界の学校教育における無償期間
・ イギリス:5歳から18歳(初等中等教育)
・ フランス:すべての教育段階(※原則公教育)
・ フィンランド:6歳から高等教育段階
・ 韓国:3歳から15歳(幼稚園から中学校)
出典:文部科学省『我が国及び諸外国の学制について』
日本とアメリカの教育の違い
日本の教育制度は、戦後アメリカの影響を受けて6-3-3-4制に変更され、小学校と中学校が単線型で接続する形をとっています。
一方で、アメリカの教育制度は州によって異なり、全国的に一貫した制度が存在しないのが特徴です。最も一般的な制度は5-3-4制(小学校5年、中学校3年、高校4年)です。地域社会や個々の学校が教育内容やカリキュラムに大きな影響を持つため、多様性がみられます。
このように、日本は一貫性と均一性に重点を置いた教育制度を有しているのに対し、アメリカは多様性と柔軟性に富んだ教育環境を提供しています。この違いは、それぞれの文化や価値観に根ざしており、K-12の教育課程にも影響を与えています。
日本におけるK-12と一貫教育の増加
政府統計の総合窓口(e-Stat)の『学校基本調査』によると、通信制を含めた高校への進学率は、98.8%で、K-12の期間はほぼ全員が教育を受けている状況です。
日本でK-12やK-16(幼稚園から大学卒業まで)の考え方が浸透し始めた背景には、従来の6-3-3制度の見直しがあります。
一貫教育を通じ、計画的・継続的で効果的な教育を行うことや、特徴のある教育を行えることが注目されています。また、高大接続・幼小連携などの学校関連会も推進されており、接続することによってより柔軟なカリキュラムを組むことが可能になると考えられています。
出典:文部科学省『高等学校教育の現状について』/政府統計の総合窓口(e-Stat)『学校基本調査』
中高一貫教育
中高一貫教育には3つの実施形態があります。
(1) 中等教育学校
一つの学校として、一体的に中高一貫教育を行う
(2) 併設型の中学校・高等学校
高等学校入学者選抜を行わずに、同一の設置者による中学校と高等学校を接続
(3) 連携型の中学校・高等学校
国公立の中学校と高等学校など異なる設置者間でも実施され、教育課程の編成や教員・生徒間交流等の連携を深めるかたちで中高一貫教育を実施
日本の中高一貫教育校の数は次のように推移しています。
文部科学省『高等学校教育の現状について』を基に作成 出典:文部科学省『高等学校教育の現状について』
小中一貫教育
平成27年6月の通常国会で「義務教育学校」の設置を可能とする改正学校教育法が成立し、平成28年4月1日に施行されました。
小中一貫教育実施校には3つの実施形態があります。
(1) 義務教育学校
一つの教職員集団が9年間の一貫した教育課程の編成・実施
(2) 併設型小学校・中学校
同一の設置者による組織上独立した小・中学校が一貫した教育を実施
(3) 連携型小学校・中学校
異なる設置者による組織上独立した小・中学校が教育課程の編成や、教員間の交流等の連携を深めるかたちで一貫した教育を実施
日本の小中一貫教育の導入校数は以下のように推移しています。
文部科学省『学校基本調査』を基に作成 出典:文部科学省『学校基本調査』
一貫教育における成果と課題
平成29年の小中一貫教育実施市区町村への調査によると、99%の回答者が取り組みの成果を認めている一方、53%が課題を認識していました。この調査では以下のような成果と課題が挙げられました。
成果としては、学力の向上、生徒の学校生活の満足度や自己肯定感の増加、教員の協力意識や指導力の向上などが挙げられます。一方、課題としては、9年間の教育課程の系統性、教職員の負担の軽減、施設や予算の確保などが指摘されています。
今後の教育方針を考える上で、これらの成果と課題を考慮し、一貫教育の質を向上させる必要があります。特に、新しい一貫教育の導入を検討する際には、教育改革の方向性やサポートが重要とされています。
出典:文部科学省『小中一貫教育の導入状況調査の結果』
多様化に対応するK-12の教育課程
国際化や情報化が急速に進展し、社会構造の変化が目まぐるしい昨今、新しい価値観や創造性を培う教育が求められています。
多くの企業がこの動向を捉えて、K-12の子どもたち向けの教育プログラムの提供や情報の共有を活発に進めています。特に、国際的な人材の養成を目指すなかで一層の注目を集めているのがK-12やK-16の教育カリキュラムです。
これらの教育課程を通じて、次世代を担う子どもたちが国際的な視野を持ち、多様な価値観を理解して創造的に行動できる人材として育成されることが期待されています。