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子どものSOSの聴き方・受け止め方

12面記事

書評

半田 一郎 著
安心な関係づくり、具体的に助言

 子どもの自殺が起きると、子どもからのSOSを感じ取れなかったのか、今後はアンテナを高くして小さなサインでも見逃さずキャッチすべき、と反省と教訓が語られることが少なくない。指導資料などは具体的なSOSにつながる言動を例示する。だが、本書では、こうした言動に気付くときには深刻な状態に陥っている懸念が強いと指摘し、「子どもが自分から不快を訴えないことが、SOSのサイン」と捉える考え方を提示する。
 全12章にわたり子どもに寄り添うときの考え方、対応の仕方について具体例を交え解説。例えば「自傷行為」を取り上げた第二章、三章。教師であれば、まず命の大切さを説いて、自傷行為をやめるように諭すかもしれない。だが、子どもにとっては「自分自身を否定されたように感じる可能性」があるという。最初の関わりは「手当てを促すことが大切」。そこから少しずつ安心して自己開示できる関係づくりへと踏み出していくことを提案する。
 また、一緒に映画を見て共有し、それについて話し合えるのに似た「ともに眺める関係」をつくること(第五章)、大人の解決策を優先せず「子どもが目指している目的地」を探り「目的地を理解して、それを共有する」(第八章)、複雑な感情をそのまま受容するトレーニング法(第十一章)なども提案した。
 専門家ならではの知見を生かし、子どもの悩みを理解する努力の方向を指し示す。
(2310円 金子書房)
(矢)

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