小田豊先生遺稿集 子ども学と保育学の狭間を考える
14面記事小田 豊 著
神長 美津子・中橋 美穂 解説
一人一人のよさ生かす教育求め続け
文科省のカリキュラム行政を担い、一人一人のよさや可能性を生かす教育の実現に貢献、一昨年夏に逝去した著者の遺稿集である。
二つの章からなり、第1章「子ども学と保育学の狭間を考える」は、関西国際大学で行われた令和2年度教員免許状更新講習の講義録。コロナ禍でのオンライン講義だったが、受講者の表情が見えているかのように、「子どもの心の流れに寄り添うってどういうことだろう」「“あなたがあなたであっていい”という教育になっているのか」と一人一人に問い掛けながらの講義だったことがうかがえる。
第2章「幼児教育へのメッセージ」は、月刊誌『保育とカリキュラム』に、平成10年から10年間、毎年4月号に掲載した指導計画の基本的な考え方についての論説。この間の10年は、新幼稚園教育要領と新保育所保育指針が示され、さらに教育基本法や学校教育法の改正を受けて、幼稚園教育要領と保育指針の改訂のための検討、今後の幼児教育の在り方についての中央教育審議会答申と、幼児教育の基本的な考え方のベースができた時期。著者はそれらの議論をリードし、施策を牽引した。その激務の間も、子どもたちの「あるがままの姿」から学ぼうと毎週、保育現場に足を運んだ。
神長、中橋両氏の丁寧な解説が小田ワールドへ誘い、「幼児期にふさわしい教育の実現」を目指して考え続けてきた著者のメッセージを分かりやすく伝えてくれる。
(2640円 ひかりのくに)
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