新興企業支援の拠点に 啓林館、東京の新社屋完成
2面記事 小・中学校、高校の教科書などを発行している新興出版社啓林館(大阪市、佐藤諭史代表取締役社長)は8月、東京支社の新社屋完成式典を行った。東京都文京区に完成した新社屋は、同社が新たに取り組むスタートアップ(新興企業)支援の拠点にする。東京大学と基本協定を締結し、東京大学推薦企業に社屋の一部をオフィスとして優先的に貸し出す。
東大本郷キャンパスとは徒歩数分の距離の場所に建てられた新社屋「東大前 HiRAKU GATE」は地上10階、地下1階建てで、延べ床面積は約5820平方メートル。安藤忠雄建築研究所が設計した。
3階以上をスタートアップに貸し出し、地下1階から地上2階までは同社のオフィスとして使用する。
スタートアップ用のテナントはさまざまな用途に対応している。オフィスやミーティングルームの他、4階から6階までには高度な実験も可能な「ウェットラボ」を設置。給排水機能をはじめ、耐薬で500キロまでの耐荷重の床を備えている。P2レベルと呼ばれる高度な実験にも対応する。
東大発の企業は近年増加傾向にあり、今年3月末時点でその数は500を超えた。産学連携活動の一環でスタートアップ支援に力を入れ、学内外問わず、スタートアップ向け施設の拡充に取り組んでいる。
今年6月には、新事業としてスタートアップ支援に取り組む新興出版社啓林館と基本協定を締結した。
入居企業は大学の研究・教育成果を基盤として新しい事業を生み出すスタートアップを東大が推薦し、同社が選定する。選定企業は学内施設と同等の条件で優先的に利用できる。
キャンパスの近くにスタートアップ企業の拠点ができる東大は、協定を通じてさらに支援の充実を進めたい考えだ。
8月7日に開かれた竣工式で東大理事・副学長の津田敦氏は「世界的な拠点にしていきたい。その大きな一歩を今回踏み出せたのではないか」などと話した。同社の佐藤社長は、「文京区から世界にユニークなアイデアを広げていきたい」と話した。
同社は昭和21年創業。発行している教科書に記す「啓林館」はブランド名の一つ。学習参考書や問題集には「新興出版社」、絵本や児童書には「文研出版」を冠している。
東京支社の社屋建て替えは、外部の人を迎え入れ、人間形成の環境として機能させることなども目指す事業として進めた。