入学時、自転車通学者全員にヘルメットを支給~軽くて涼しい自転車用ヘルメットが生徒に好評~
13面記事自転車用ヘルメットを着用して登校する谷田部東中学校の生徒
茨城県つくば市立谷田部東中学校
自転車事故では頭部の損傷が致命傷になることから、今年4月から自転車に乗る人は年齢にかかわらず、ヘルメットの着用が努力義務化された。こうした中、つくば市では中学校で自転車通学を希望する生徒に対し、入学時に自転車用ヘルメットを支給。登下校中を始め、日常の利用を含めた不慮の事故から身を守る備えとして役立てている。その取り組みについて、つくば市立谷田部東中学校の永井英夫校長に話を聴いた。
日常的な装着を促す進化した自転車ヘルメット
自転車乗車中の事故による死傷者数は中・高校生が多いにもかかわらず、保護者の理解や購入負担が足かせとなり、いまだに自転車用ヘルメットの着用が一律に進んでいない学校もある。そうした意味でも、つくば市の無償支給の取り組みは画期的だ。とりわけ、地域の交通事情から629名に及ぶ生徒のほとんどが自転車通学を行い、中には7キロ近くかけて登校している生徒もいる同校にとっては、入学時に全員のヘルメット着用が実現できる意義は大きいに違いない。
ただし、生徒から「恥ずかしい」「着けづらい」と敬遠されてきた、昔のままのヘルメットでは装着がおろそかになりかねない。その点についても「2~3年前からスポーティーなデザインに変化。特に、今年度に納入されたヘルメット(カワハラ社製)は軽量かつ通気性にも優れた仕様になっており、生徒たちの間でも大変好評です」と話す。
確かに、登下校中にかかわらず、日常使いからヘルメットの装着を怠らないようにするためには、デザイン性はもちろん、夏の蒸し暑い時期でも涼しくかぶりやすい機能性を備えていることも、大事な要素の1つといっていい。また、自転車で通う教員がいる学校では、自らが手本となってヘルメットを着用することも大切だ。
加害者にならない自覚や危険予知能力を高めていきたい
生徒のヘルメット着用率を高める指導としては、年度初めに交通安全講習を実施。特に自転車通学を始めたばかりの新入生には通学路中の危険箇所を周知させるとともに、教員が折に触れて自転車乗車中の交通ルール順守を徹底するよう促している。加えて、地域で見守る目も重視しており、通学路等でヘルメットを装着していない生徒を見かけたら、躊躇なく学校に連絡して欲しいと話しているという。
「もっとも以前の中学生に比べると、ヘルメットを着用する意識が高いのが今の生徒の特徴です。それは学校・家庭での啓発に加え、自転車通学の申請書には、ヘルメットの着用を守らなければ許可を取り下げることも明記してあるなど、ルールを守ることに関して自覚を促す機会が多くなっているからだと思います」
こうした日頃からの指導の甲斐もあり、同校長が着任してから2年経つが、大きな交通事故は起きていない。ただし、狭い道で一般の人や高校生が乗る自転車と衝突する事故は数件あったことが気にかかると指摘。「近年では学生が歩行者などをはね、高額な賠償請求を負うケースも起きていることから、自転車の走行には加害者にならないための教育もより一層重要になっています」と話し、現在ではそうした面からの指導にも力を入れている。
さらに、「最近の生徒は微に入り細に入り、周囲の大人から守られてきた部分も多いため、以前よりも危険予知能力が低い気がしています。ですから、今後の交通安全教育についても、リアルなシミュレーションが可能な映像教材などを積極的に取り入れ、自ら危険を回避する能力を身に付けさせていきたい」と抱負を語った。