世界と日本の事例で考える学校教育×ICT
14面記事京都大学大学院教育学研究科教育実践コラボレーション・センター 監修
西岡 加名恵 編
現状と将来像 多面的に考察
コロナ禍で前倒しとなった「GIGAスクール構想」で児童・生徒のコンピュータ環境が様変わりした学校現場と、課題解決に向け実践してきた京都大学大学院教育学研究科教育実践コラボレーション・センターの成果などが結実したのが本書である。
全体は日本と世界を大別して2章で構成する。第1章「日本におけるICT活用の現在」に収める全6節には、教師が「教具」として、児童・生徒は「文具」としてICTを使いこなす現在地を点検しながら、改善点を指摘しつつ、一歩進めて今後の学校像、授業の形などについて言及する箇所が随所にある。
第2章「諸外国におけるICT活用の展開」はアメリカ合衆国、イギリス、フランス、韓国、中国、オーストラリア、カナダを取り上げ、それぞれの特徴を描き出しながら、日本の「展開」に向けたヒントを与えてくれる。
「子どもたちの日常生活では触れる機会の少ない、知的で文化的でパブリックなデジタル環境をこそ学校において保障し、デジタルメディアとのより成熟した付き合い方を学ぶことが大切」との指摘は、既にデジタルネーティブである児童・生徒を指導する際には重要だろう。児童・生徒だけでなく、カナダの事例のように「デジタル世界に生きる市民としての教師の育成」も望まれよう。整ったICT環境を今後の教育にどう生かすか。さまざまな側面に光を当て示唆に富む。
(2200円 明治図書出版)
(矢)