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自然災害防止教育と学校の役割

14面記事

書評

北 俊夫 著
指導計画や実践のヒントを紹介

 東日本大震災では大津波で多くの命が奪われた。しかし、岩手県釜石市の小・中学校は犠牲者をほとんど出さなかった。「釜石の奇跡」と呼ばれたが、日頃から地道に地震や津波に備えた防災教育を行ってきたからだ。この教訓は、今も各学校で生かされているだろうか。意識が希薄化していないだろうか。
 本稿執筆中も水害や土砂災害の被害が報じられている。近年の自然災害の多さは誰もが実感するところ。いつでも、どこでも、起こり得るという意識を持ち「自分(たち)の命は自分(たち)で守る」ための教育を強化しなければならない。各教科に防災に関連する内容があるが、特に小学校の社会科では、4年と5年に自然災害についての内容が明確に位置付けられており、その指導計画や実践のヒントが紹介されている。教師は必ずしも防災や自然災害の専門家ではないので、関係機関の支援を得ることも大切だ。
 兵庫県南あわじ市は、南海トラフ地震・津波に備え、市を挙げて防災教育に取り組んでいる。文科省指定校として研究を行った福良小の防災教育全体計画や、著者が賀集小で子どもたちに語った防災学習や保護者に行った防災講演の詳細が掲載されている。具体的なので実践の際の参考となるだろう。
 関東大震災から100年。自然災害は「天災」だが、事前の対策や予防を怠ると「人災」になってしまう。自然災害防止教育は待ったなしだ。
(1430円 文溪堂)
(大澤 正子・元公立小学校校長)

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