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1人1台端末とICT学習アプリでいつでも学べる環境づくり

12面記事

ICT教育特集

生徒が教員役となり、解答をプロジェクターに投影して解説

大阪産業大学附属高等学校

 大阪市城東区に位置する大阪産業大学附属高等学校は、1928(昭和3)年に開校した大阪鉄道学校を前身に持つ。「偉大なる平凡人たれ」を建学の精神に掲げ、徳育・知育・体育の三位一体の教育実践をモットーに、進学指導やスポーツ指導、部活動の盛んな学校として知られる。今回、同校で導入しているカシオ計算機のICT学習アプリ「ClassPad.net」の、授業での活用法や教育効果について紹介する。

多彩な機能で授業効率の向上へ
 同校は、デジタル時代の学びに備え、校舎全館には電子黒板機能付きプロジェクター・ホワイトボードを設置。テキストや資料を教室で大きく表示することで、生徒に分かりやすく要点を説明できるようになった。1人1台端末は学校指定のChromebookを各家庭で購入するBYAD方式(Bring Your Assigned Device)でそろえた。その代わり電子辞書などの購入費を軽減する狙いから、カシオ計算機のICT学習アプリ「ClassPad.net」を全学年で導入している。辞書機能をはじめ多彩な授業支援ツールがセット化されており、授業効率の向上や、生徒の自主的な学びに役立つと考えた。

情報の整理・分類に欠かせない「ふせんツール」
 2年生の情報Ⅰでは、単元「情報デザイン」の授業で「ClassPad.net」のデジタルノート機能を活用中だ。ここでの生徒の課題は、1人1つの都道府県を担当し、その特徴や名物を調べてスライドにまとめることだ。「おすすめの季節」「特産品または名物」などの項目で情報を集めるところからスタートした。
 デジタルノート機能は、集めた情報を整理・分析するのに役立つ。テキストふせんは、キーボード、手書き入力のどちらもでき、ふせんや文字の色も選べる。参照したウェブページのリンクを貼り付けることで出典や引用元も記録できる。整理した情報はスライドにまとめ、「ClassPad.net」の提出機能を使って「都道府県紹介」のフォルダで共有する予定だ。
 授業を担当した松永秀樹教諭は、「ICTを活用するようになって生徒の調べることへのハードルが低くなったと感じている。テキストふせんにメモしていき、関連するものがあればリンク機能でつなげて表示できる。生徒は自分の理解に沿った使い方ができているようだ」と話す。
 この授業を受けた田中瑠夏さんは「1人1台の端末があると授業内容が頭に入りやすい。デジタルノート機能はペンで書けるから、授業中に大事だと思ったことをすぐにメモできるのがいい」と言う。奥山生さんは自宅から「ClassPad.net」にアクセスでき、途切れることなく学べる点にメリットを感じている。「自宅で分からないところは、すぐに調べられて効率的」と活用中だ。


生徒がふせんツールでまとめた福島県の特産品

数学Ⅲの演習問題もグループで学び合える
 3年生の数学Ⅲは、「ClassPad.net」を使うことで、思考過程を生徒が共有しながら学ぶ授業に変わってきている。
 「微分法の応用」の単元ではクラスを3人ずつのグループにわけ、全国の大学入試問題から選んだ3題を分担して解いていく。解けた生徒からデジタルノートを提出し、教室全体にプロジェクターで投影して確認する。さらに自分の解き方を生徒が教員役となって説明することで定着を図るようにしている。
 提出したデジタルノートはその場で綿谷知貴教諭が添削して返却する。「ClassPad.net」の「提出機能」を使えば、生徒がアップロードした答案を端末上で添削し、すぐに返却できる。ふせんツールで重要事項をハイライトすれば、考え方のポイントも示せる。
 こうした方法は学習効率を一気に高め、生徒のやる気も引き出している。「これまで先生にたずねてから、友達と紙のノート交換をして解き方を見せ合っていた。1人1台端末になってからは提出時にいろいろな友達の解き方を見られるのが良い」と話すのは岸壯樹さんだ。長尾孝祈さんは「過去に実施した授業内容をすぐに見返せるのが便利。紙のノートだと1冊終わってしまったら、過去のノートの内容がすぐに確認できない。端末なら探しやすく復習しやすい」と話す。他にも、数学ツールのグラフ描画機能も使い、理解を定着させているそうだ。
 綿谷教諭は「ICTを使った双方向授業をするようになって、生徒同士で間違いに気づいて教え合うようになった。授業中に発言しにくい生徒も友達同士なら聞きやすい。理解するまでの時間や提出のタイミングも早まった。何より生徒たちが楽しそうに勉強しているのを見るのがうれしい」と顔をほころばせる。

大学受験を支える辞書をフル活用
 大学受験を控えた3年生は自宅学習で「ClassPad.net」のさまざまな機能を利用しているようだ。岸さんはオンライン辞書機能の一つで英語学習月刊誌の『CNN ENGLISH EXPRESS』がお気に入りだ。「最新のニュースを英語で聞くことができる。和訳もついているのでためになる」と、楽しみながら英語を学んでいる。
 他にも国語や英語などの主要教科で「辞書機能がすぐに使えて便利」という生徒の声は多い。6教科に対応した「ClassPad.net」のオンライン辞書コンテンツが、受験勉強に欠かせないツールになっている様子がうかがえる。
 生徒たちに将来学びたいことや就きたい仕事を聞くと、統計学、プログラマー、教員、舞台制作と多彩だ。ICT教育を充実させ、生徒の主体的な学びを支える同校の教育は、それぞれの夢を叶える確かな学力を育てている。

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