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不登校の歩き方 1万人のぼくとわたし 親たちの言葉と語り

18面記事

書評

荒井 裕司 編著
小林 正幸 監修
一人一人違う悩み 専門家が助言

 著者が代表を務める「登校拒否の子どもたちの進路を考える研究会」が、平成7年以来、114回にわたり重ねてきたセミナーの記録から生まれた本。子どもたちや保護者の思い、専門家のアドバイスなどが詰まっている。
 内容は、不登校についての考え方、関わり方、子どもをより深く理解するヒント、昼夜逆転やネット・ゲーム依存への対応、きょうだいへの配慮、学校との付き合い方、進路など多岐にわたる。だが、究極のメッセージは、「不登校の歩き方」は一人一人皆違い、また違っていいんだよ、ということだろう。
 学校に行くのが当たり前と思う大人の目には、不登校は「困ったこと」と映る。けれども、実際には子どもたちは「並の覚悟」では不登校になれない。他の選択肢が見えなくなるほど追い詰められてしまっている。
 「もし不登校にならなかったら、この子は死んでいたかもしれない」という、あまりに重い著者の言葉を、皆さんはリアルなものとして受け止められるだろうか。
 小学校低学年の頃から不登校状態が続いたという女の子の言葉が紹介されている。
 「父親に話しかけるときは、『大丈夫だよ』と言ってほしいとき」
 この「大丈夫だよ」と言ってあげられる大人、社会の包容力こそが、子どもたちの幸せのために一番必要なものではないだろうか。
(1694円 主婦の友社)
(浅田 和伸・長崎県立大学学長)

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