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校長の条件

18面記事

書評

寺崎 千秋 著
より良い学校経営への指針

 「最高の指導者は人々にその存在を気付かせない」。老子の言葉を引きながら、「おわりに」で述べる著者の理想の指導者像。理想の校長とは、と問われて答える校長像はそれぞれの立場や、管理職との出会い、付き合い方などによって異なるだろう。「その存在に気付かせない」で、当初の目標を達成していくことを良しとする校長は得難いように思える。
 本書は全国連合小学校長会会長などを含むキャリアの集大成の一端であり、著者の知見、経験のみならず、多くの管理職との交流も反映した“校長学”の書と言ってよい。
 「今、求められている校長の役割」「校長に求められる能力」「学校を変えていく毎月の学校経営」「先端をリードする校長の講話・挨拶・スピーチ等」「学校の危機管理」の全5章で構成。
 特に、「学校を変えていく毎月の学校経営」(第3章)は留意点を整理し有用だが、より良い学校に向けた経営の発展過程を具体的に描き出している点が秀逸。発展過程の状態に未達であれば何月かにこだわらず、さかのぼって学校経営にチャレンジする指針になる。
 子どもや教員、家庭、地域など校長が目配りすべき守備範囲は広い。多くの命を預かる校長は「最後の砦」であり「決断」と「説明」が絶えず求められる重い職であることが伝わる。文中に垣間見える“本音”に触れ、経営判断に迷ったときに響く、含蓄のある言葉に出合える好著である。
(2420円 教育出版)
(矢)

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