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何のためのテスト? 評価で変わる学校と学び

20面記事

書評

ケネス・J・ガーゲン、シェルト・R・ギル 著
東村 知子+鮫島 輝美 訳
「関係に基づく評価」を提言

 全国学力調査が再開された時、結果の数値が独り歩きし、負の影響も与えた。本書は、テストに関して抱いていた疑問や違和感を解きほぐし、これからの教育評価について示唆を与えてくれる。
 著者らは、今の教育は新自由主義によって工場メタファーとなり、試験の成績が教育の目的そのものになっていると批判。テストが不安や恐怖を招き、学びや安心感にダメージを与えていると問題点を指摘する。そして代替案として「関係に基づく評価」を提案。ラテン語の「評価」の語源は「強化する」「力を与える」意味だという。学校の生活は絶え間ない関わり合いのプロセスである。「関係に基づく評価」の目的は、

 (1) 学びのプロセスを豊かにし
 (2) 学びのプロセスに継続的に関わり
 (3) 生成的な関係を育むこと

 ―とし、「会話」を大切にする。成長の機会や可能性、潜在力に焦点を当てた評価であり、小・中学校などにおける実践例を紹介して、理解を助ける。
 日本でも、ポートフォリオなどテストに頼らない評価の取り組みが進みつつある。現実には、入試のための資料という問題はあるが、肯定的なフィードバックや省察的な質問、協同的な探究、学習の振り返りなどの実践は可能だ。
 本書では学校評価や教員評価についても論じている。時代のキーワードは「ウェルビーイング」。豊かな学びが継続するような関わりが、これからの教師の役割であろう。
(2750円 ナカニシヤ出版)
(大澤 正子・元公立小学校校長)

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