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小学生『夢をかなえる』作文コンクール 第16回「学校賞」受賞校に聞く

8面記事

企画特集

相模女子大学小学部出張授業の様子

 子どもたちに、将来の夢を描くことの大切さや、その実現に向けたライフプランニングの重要性を理解してもらおうと開かれる「小学生『夢をかなえる』作文コンクール」(主催=特定非営利活動法人日本FP協会・日本教育新聞社、後援=文科省他)が、第17回の募集を開始した。応募者はオリジナルの課題図書を読み、夢をかなえるまでの「ライフプランシート」と作文を提出する。道徳や国語などの教科、総合的な学習の時間やキャリア教育、夏休みの宿題と幅広く活用できるのが特徴。児童が夢に向かってどのように努力すればよいのかが分かると教員にも好評だ。昨年度「学校賞」を受賞した3校に、コンクール参加の意義や取り組みの詳細を聞いた。

自分の夢や生き方を考え、表現できるキャリア教育へ
埼玉・春日部市立備後小学校

総合のキャリア教育に活用
 前回の「夢をかなえる作文コンクール」で6年生51名が応募し3名が「奨励賞」を受賞、また「優秀学校賞」を受賞した春日部市立備後小学校(正籬洋子校長、児童数224人)は「総合的な学習の時間」を活用し、キャリア教育の一環としてコンクールへの応募を組み込んだ。ライフプランシートの作成と作文執筆を、キャリア教育の集大成の活動として位置づけている。
 年間の取り組みの流れはこうだ。まず、職業についての動画を視聴し、さまざまな職業があることを学ぶ。それらの中から自分が「なりたい職業」を一つ定め、調べてみようときっかけを作る。
 続いて夢に近づく方法や、憧れの仕事に就くためのライフプランニングの大切さ、かかるお金のイメージをもてるように作文コンクール課題図書「夢をかなえる」を読み、日本FP協会がホームページで公開する約20分のイラスト動画「夢をかなえるライフプランニング教室」を視聴する。
 その後、個人でライフプランシートの作成に取り掛かる。例えばプロ野球選手になりたいという夢をかなえるなら、子どもたちは「ドラフト会議で指名を受ける」など断片的な知識は思い浮かべることができる。より具体化するには「憧れの仕事に就くためにはどんな道のりがあるかを逆算して考えてみよう」と、投げかけるのがポイントだ。
 ドラフト会議で指名されるには、甲子園で活躍すること、甲子園に出場するには強豪校への進学を目指すこと、高校進学のために中学校や、残りの小学校生活をどう過ごすべきか―などと今の自分に届くまでを考えていく。児童は1人1台端末で検索をし、家族や身近な人にインタビューをするなどして情報を集めていった。

構成にもひと工夫
 子どもたちが苦心したのは「どこでどのぐらいお金が必要になるのかの情報集め」だったという。調べきれないときには、田口教諭が「こういうところにもお金がかかるんじゃないかな?」と気づけるよう支援していった。
 続いて、完成したライフプランシートをもとに作文執筆へと進む。児童にはライフプランを時系列で述べるだけでなく、夢を持つようになったきっかけや動機を入れるようにアドバイスした。自分の気持ちや印象に残った言葉を冒頭に置くと、読み手を引きつける「つかみ」になる。まとめには今の意気込みを加えると「本気度」が表現できる、など構成にもこだわり、論理的で表現力豊かな作文になるよう導いていった。相手に伝えようとする意識をもって作文を書けたことが学校賞受賞にもつながったようだ。

中学生活の意欲に
 昨年度、コンクールに応募した6年生は今、中学校でそれぞれの学校生活を送っている。奨励賞受賞者3名にコンクールを通して学んだことを振り返ってもらった。
 黒川紗菜さんは選手を支えるスポーツトレーナーになるのが夢だ。「最初はなりたいという思いだけだったが、調べることでなるための大変さが分かった。自分に足りない力をこれからもっと付けていきたい」と話す。シンガーソングライターになる夢を持つ豊田彩夏さんは「ライフプランシートや作文を書いたことにより、夢に向かっての決意やたどりつくまでの苦労を改めて簡単ではないと実感した。夢に対する思いと向き合うことができた」と語る。
 「作文を書くにあたり、調べたことで夢への厳しさがよく分かった。そのために頑張らなければと思い、現在もその夢に向かって努力している」と振り返るのは秋場夢斗さん。プロ野球選手という大きな目標を立て、甲子園出場を目指して日々練習に励んでいるという。
 卒業した3人が前向きに中学校生活を送っていることや、進学意欲を高めていることを知った田口誠教諭は「遠い先の夢を身近に感じることができた。昨年度、初めての応募だったが取り組んで良かった」と話す。コンクールへの応募は児童のキャリア観をゆさぶり、その先の生き方を「自分事」として考える第一歩になっている。


田口 誠 春日部市立備後小学校教諭

児童の未来を鮮明に夢を描いたライフプラン
神奈川・相模女子大学小学部

 相模女子大学小学部(小泉清裕校長、児童数458人)では、卒業後の進路や目標を考えるきっかけにするため毎年6年生が応募している。昨年度の第16回コンクールで、同校は「優秀学校賞」を受賞、また高学年部門で最優秀賞1名、優秀賞1名を輩出する快挙となった。
 最優秀賞を受賞した小松桃寧さんは「みんなの笑顔を守りたい」のタイトルで父のような総合内科医になる夢をつづった。野外音楽フェスティバルの会場で倒れてしまった観客を助けに走る父の姿や、探究活動で訪問した病院の様子を見て「患者の笑顔を守るのが医師の仕事」という気づきを表現した。
 自宅で応募作品を原稿用紙に下書きし、文字数の確認をしたりパソコンで打ち出したりと授業時間外にも独自の努力をした小松さん。「喜びだけでなく達成感も大きかったのでは」と、担任の天野悟司教諭は語る。
 優秀賞を受賞した大久保知花さんは「まさか選ばれるとは思っていませんでした。嬉しいです」と喜びの声を聞かせてくれた。「お兄ちゃんがお世話になった病院で働いて」と母からアドバイスを受け、それまで決まっていなかった将来の夢が看護師に決まった。進学から定年後までを想定したライフプランシートからは、夢に向かって着実に取り組もうとする気持ちが読み取れる。天野教諭は「普段の学習も学校行事も丁寧に取り組む努力家。頑張りが報われてよかった」と話す。
 6年生の応募までの流れはこうだ。道徳を含む独自の教科「つなぐ手」で、日本FP協会のファイナンシャルプランナーを招き、ライフプランニングについて教わる。次にライフプランをデジタルツールに入力し、前年度受賞作品も参考にしながら作文を書いていく。
 天野教諭が大切にしているのは、第一稿を書いた後の個別の「聞き取り」だ。誤字や脱字の指摘だけでなく、児童が本当に書き表したいと思う真意を引き出すのが狙いだ。「時間はかかるが思いを確かめ、作文の内容とすり合わせる指導をしている」と天野教諭。
 将来の夢をまだ持つことができていない児童に対しては、自分が立てたライフプラン通りに生きなくてもよいことや、今、興味のある職業を調べる学習にしてもよい、と助言する。
 「作文完成までの間に、児童は自分の夢やそのルーツについてポジティブに捉え、実現のために必要なことを具体的に考える。教師やファイナンシャルプランナーがそれを応援することで、児童は自分の良さを見出し、自信を深める効果がある」と天野教諭。「全国の先生も、夢について語る児童の声に耳を傾けながら応援し、夢が膨らむことを一緒に楽しんでほしい」と語る。

出張授業との併用でキャリア教育の充実を図る
茨城・土浦市立右籾小学校

ユニークな実践で特別学校賞
 土浦市立右籾小学校(中山弘校長、児童数261人)は、昨年度の第16回コンクールで「特別学校賞」を受賞した。特別学校賞とは昨年度より新設された学校応募向けの賞で、従来からの「最優秀学校賞」「優秀学校賞」に準じ、ユニークな教育実践・学習活動を行っている1校を表彰するもの。同校は6年生50人が応募、日本FP協会の「ライフプランニング出張授業」とコンクール応募を組み合わせて実施した点が評価された。
 6年生の総合的な学習の時間のテーマを「ひろげよう夢・希望」に設定した昨年度、学年では自分の将来についてじっくり考える機会を持たせたいと考えた。職業調べに終始せず、自分の人生を考える一つの材料として、日本FP協会が実施するライフプランニング出張授業を6月に実施した。

全員が作文を書ける工夫
 出張授業では協会から派遣されたファイナンシャル・プランナー(CFP(R)認定者)の高村浩子氏が講師として同校を訪問。ライフプランの重要性を話し、実際に「ライフプランシート」の作成も行った。
 協会が提供するシートは1年ごとにライフプランを立てるものになっているが、2コマの中ですべて完成させるのは難しそうだと学年で判断し、同校オリジナルのライフプランシートを用意した。こちらは「中学卒業」「高校卒業」と複数年をひとくくりにし、人生の節目ごとに夢をかなえるために必要な努力すべきことを記入できるようにした。夢をかなえるために必要なこと、そのためにかかるお金の額を知り「こんなにかかるんだ」と驚きの声も聞こえてきたという。
 出張授業の準備を進める中で「夢をかなえる作文コンクール」の存在を知り、学習のまとめとして応募することにした。出張授業で完成させたライフプランシートはそのままコンクール応募に活用できるのもメリットだ。
ただし、6年生全員が作文を完成させ、応募するにはきめ細かな支援が必要だ。担任の中島薫教諭と及川葉月教諭は、自身が教職に就くまでのライフプランシートを作り、作文例を示すなど見本を示した。さらに図書館司書と連携し、職業に関する図書を6年生の廊下に長期で設置するなど、児童が主体的に学べる環境を整えた。作文の推敲には1人1台タブレットを活用してアドバイスし、丁寧かつ効率良く支援を進めた。学校行事も多く忙しい6年生だが応募締切日までに全員がライフプランシートと作文を提出することができた。
 今回、出張授業の実施とコンクール参加を併用したことで「小学校で学ぶべきキャリア教育の充実を図ることができた。取り組みを通して子どもたちは自分や友だちのよさ、自分の知らなかった生き方の可能性に気づくことができた」と、中島教諭はその内容を評価する。「人とのかかわりを通して豊かな社会性を身に付ける」「自己指導力を高める」「自分の将来を見据えて学習を進める」などの同校のキャリア教育の目標にも合致した取り組みとなった。


右籾小学校で出張授業を行う高村氏

コンクールへの応募を支援中
イラスト動画を公開

 第17回「小学生『夢をかなえる』作文コンクール」を主催する特定非営利活動法人(NPO法人)日本FP協会のコンクール公式サイトでは、イラスト動画「夢をかなえるライフプランニング教室」を公開している。
 「お金の大切さ」や「夢をかなえるための考え方」など約20分間の動画を視聴することでライフプランニング=人生設計の重要性を学ぶことができる。
 授業での視聴や「小学生『夢をかなえる』作文コンクール」作品応募の準備・動機付けの機会としてPC端末でも活用できる。また、動画を視聴する際の参考資料として、スライド毎のキャラクターのセリフやFPが伝える動画内での注意点やポイント等をまとめたスクリプトも用意されている。

 「夢をかなえるライフプランニング教室」
 https://www.jafp.or.jp/personal_finance/yume/inst_disp/movie/

コンクール応募との併催も効果的
ライフプランニング出張授業実施中

 日本FP協会では、「小学生『夢をかなえる』作文コンクール」の一環として、ライフプランニングの大切さを知る機会の提供を目的に、ファイナンシャル・プランナー(FP)を講師として小学校に派遣する「ライフプランニング出張授業」を実施している。
 「金融経済教育」や「キャリア教育」の他「2分の1成人式」「卒業文集制作」等の学習活動の一環としても利用されている。「小学生『夢をかなえる』作文コンクール」への応募と組み合わせた学習活動への導入も効果的だ。
 派遣に係る費用(講師交通費等含む)は、日本FP協会が負担。対象学年は小学校4~6年生で、募集期間は4月~10月上旬まで。申し込みは公式サイトから。

「出張授業」問い合わせ先
 日本FP協会 広報部
 Tel=0120―211―748
 FAX=03―5403―9795
 E―mail=yume-kanaeru@jafp.or.jp
 受付時間 10:00~16:00(土日・祝日・年末年始を除く)

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