コトのデザイン 発想力を取り戻す
17面記事谷内 眞之助・山川 修 著
発想広げる多様な演習法も紹介
デザイナーと聞くと、これまでになかったような新しいモノを創り出す人というイメージが思い浮かぶ。最先端のきらびやかな衣服を生み出す服飾デザイナーが、その典型である。ここで言う「新しいモノ」とは、デザイナーの創造的な思考の産物だが、それはどのようにして、どこから生まれてくるのか。本書は、その秘密を探る鍵を示している。
「モノのデザイン」は、作り出されたモノの形態や機能、使い方などを重視する。それに対して、「コトのデザイン」は、人やその生活から出発する。あるときには、その人に成り切って、既成概念や常識に捉われることなく、自由に発想していく。問題解決を急がず、発想が豊かに展開されていくプロセスを大事にするのである。
「コトのデザイン」には、自分自身の生き方をデザインすることも含まれる。自分の過去やさまざまな人脈を図示するなどによって、これからの生き方の方向性を発展的に探究するのである。
本書の後半部分では、「コトのデザイン」で用いられる、多様な発想法の演習も紹介されている。しりとり、連想、言い換え、逆発想など、子ども時代に遊んだ言葉遊びが、豊かな発想の源泉だったことに改めて気付かされる。
「コトのデザイン」とは、思考を鍛錬し、人生の主人公になるためのものと言えよう。
(2750円 春風社)
(都筑 学・中央大学名誉教授)