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成績だけが評価じゃない 感情と社会性を育む(SEL)ための評価

17面記事

書評

スター・サックシュタイン 著
中井 悠加・山本 佐江・吉田 新一郎 訳
尊厳守り主体的学習者を育む

 著者は、長年の中・高校での教師生活や研究活動を通じて、全ての子どもが意味のある学習をするための最適な条件は、「感情と社会性の学習(SEL)」を教科内容に取り込むとともに、最適な評価を行うことが重要であると述べている。
 本書の構成は、

 第1章「信頼できるだけの人間関係を築いて学びをサポートする」
 第2章「評価のなかで自己認識を育てる」
 第3章「より良く学ぶために自己管理を促進する」
 第4章「責任ある意思決定を教えて、学びに対する生徒のオウナーシップ(当事者意識)を高める」
 第5章「成績に対する感情的な反応を理解し、改善する」
 第6章「個別評価で生徒の尊厳を高める」

 ―となっている。各章のタイトルから、著者がどのような教育を目指しているかがよく理解できる。

 評者が特に注目するのは、第1章で紹介している、米国の小・中・高校の教師たちが新学年が始まる前に、担任する予定の子どもと保護者に送った手紙である。著者は、その目的として適切で信頼できる関係を築くためであると説明している。
 評者は、現在の日本において、校内研究の中心の一つであった、学級経営・学年経営をはじめとする生徒指導に関する研究や研修が影を潜め、子どもとの信頼関係を適切に築けない教師が増えていることを危惧している。その意味でも、多くの教師には本書をぜひ一読されんことを願う。
(2640円 新評論)
(新藤 久典・文部科学省学校業務改善アドバイザー)

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