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Earth for All 万人のための地球 『成長の限界』から50年 ローマクラブ新レポート

17面記事

書評

武内 和彦 監訳
ローマクラブ日本 監修
不平等解消へ劇的転換の必要性訴え

 世界的ベストセラーになった1972年の『成長の限界』から50年。スイスに本部を置くシンクタンク「ローマクラブ」が2022年に発表した新たなレポートの和訳である。
 「人類の長期的な可能性は、その文明が今後数十年の間に5つの劇的な方向転換を遂げられるか否かにかかっている」として、

 (1) 貧困の解消
 (2) 重大な不平等への対処
 (3) 女性のエンパワメント
 (4) 人と生態系にとって健全な食料システムの実現
 (5) クリーンエネルギーへの移行

 ―の各分野で今すぐ取り組むべき課題を挙げ、具体的な解決策を提示する。

 政策提言の中には「低所得国に対するすべての債務を帳消しにする」「上位10%の富裕層に対して、彼らの所得が国民所得の40%未満になるまで増税を行う」など、不可能に思えるものもある。そのためか、政府の強力な実行力を求める内容になっている。
 世界的な課題についての見方、捉え方を学ぶ上で参考になると同時に、これらの問題提起をどう受け止めるかが問われることになる。
 学校は「産業革命以来、驚くほどほとんど変わっていない」とし、教育の見直しは、事実とフィクションを見分ける「批判的思考」と「システム思考」という二つの基盤の上に構築される必要があると言う。このような「批判的思考」の重視は、日本だけでなく、今や世界共通の「時代の要請」なのだろう。
(2640円 丸善出版)
(浅田 和伸・長崎県立大学学長)

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