一刀両断 実践者の視点から【第326回】
NEWS「風化」を防ぐには
《原告遺族死亡で訴訟終了 三重県立高男子生徒いじめ自殺》(伊勢新聞)という見出しの記事によると、この結果、生徒が自殺した事実は風化してしまうことだろう。これが現実である。亡くなった青年の魂や遺族の無念はやがて忘れ去られるのが世の常になっているのではないだろうか。
戦争然り事件事故のほとんどが風化されていくのを止め、記憶に残す為には語り継ぐしかない。この作業を教育の中に位置付けなければならないが、都合よく作られ脚色された内容が今の教科書にはあまりに多いと指摘する者も少なくない。
人間の欲望や物欲、権力欲が引き起こす争いや不幸を止める、または予防する、制御する学びはどこにあるのだろうか。現状の教育課程にははっきりと示されてはいないし、示そうとはしていないのではないだろうか。
ここに私が強調している「動徳」授業をやってみせる意味がある。この夏に日本全国50会場に講話に出向く事になるが、是非とも共感される方はお出かけ願いたい。
それに先立ち、台湾の高雄にてお国事情で教育がされているかを視察する。もちろん義務教育を子どもたちの姿から見極めたいと思っている。
(おおくぼ・としき 千葉県内で公立小学校の教諭、教頭、校長を経て定年退職。再任用で新任校長育成担当。元千葉県教委任用室長、元主席指導主事)