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伝説の校長講話 渋幕・渋渋は何を大切にしているのか

18面記事

書評

田村 哲夫 著
古沢 由紀子(聞き手)
広範な題材と情熱で心揺さぶる

 渋谷教育学園の理事長と中高一貫校の校長を半世紀にわたり兼務し、6学年で各5回、2校で年間60回、生徒たちに直接語り掛ける「校長講話」(2022年度から「学園長講話」)を続けておられる田村哲夫氏の、2021年度の講話のエッセンス(第一部)と、新聞の連載を元にしたこれまでの歩みや論考(第二部)から成る。
 氏は学校経営者としても卓越した方だが、それ以上に教育者であることがよく分かる。
 発達段階に応じテーマを設定して行う講話の狙いは、生徒たちが文系・理系の枠を超えた教養、リベラル・アーツに触れ、自分を見つめることにある。話の内容は、国内外の思想、歴史、科学の発展など実に幅広く、縦横無尽の観がある。そのために、古典や歴史の理解に加え、常に新たな知識や社会情勢をインプットし、入念な準備をして臨んでおられるという。そのエネルギー、使命感、真剣勝負の姿勢に圧倒される。大人が読んでも勉強になるし、教育関係者は「自分ももっと頑張らねば」と勇気を奮い立たされることだろう。
 自由や平和への強い思い、子どもたちへの優しさや信頼なども随所に表れている。
 講話の最後は「私は…が大切だと考えるけど、君たちはどうかな。よく考えてみてください」と締めくくるそうだ。われわれはこの書から何を考え、どう自分に生かせるだろうか。
(1760円 中央公論新社)
(浅田 和伸・長崎県立大学学長)

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