新時代のスクールカウンセラー入門
16面記事松尾 直博 著
組織的なリスク管理に向けて
いじめや不登校に対して予防的な措置を取ることは理想だが、事が起きてから慌てふためくことが依然として多いように思う。教員の経験が浅い初任者などは、そうした案件に遭遇すると対応に苦慮する。なぜなら、教員養成課程で学べることの多くは知識にとどまり、刻々と変化して重篤化する流れに適切に対応する力は、なかなか身に付かないからだ。
本書はスクールカウンセラー(SC)の基礎知識や役割、いじめ、不登校などの対応や支援について示し、SCの可能性にも触れている。SCになりたいと思っている人や、SCと連携して相乗効果を生み出していきたい人のために、教員養成課程や新規採用の早いうちに知っておきたい内容が網羅されている。管理職にとっても組織マネジメント力やリスクマネジメントスキルをさらに高めるための指南書として有益である。
そして、コラムやいじめのケースと対応例は特に読み込んでほしい箇所である。新時代というタイトルを付けていることからも、これまでには考えられないような課題や難題がそこかしこで起きてきており、対応が遅くなると加害者までも被害者となるケースがあることは認識しておかねばならない。「皆が幸せを感じ、生き生きできる学校や社会を創るために励んでいる人。そうしたさまざまな人たちを応援していきたいと思っている」と、著者の熱い思いが随所にあふれ出てくる秀書である。
(2420円 発行・時事通信出版局、発売・時事通信社)
(大久保俊輝・麗澤大学教職センター長)