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災害用マンホールトイレ(貯留型)今年度中に小中学校など全防災拠点に整備を完了

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横浜市が整備を進める「災害用ハマッコトイレ」

神奈川県横浜市

断水時でも使える衛生的なトイレ環境を
 横浜市は災害時でも使えるトイレの確保として、2008年に災害時仮設水洗トイレ用排水設備技術基準を制定し、2009年度から液状化被害が想定されている51の地域防災拠点に下水道直結式によるマンホールトイレの整備を始めた。2013年に51拠点の整備が計画通りに完了することを受け、整備対象施設の検討を行い設置場所を全ての地域防災拠点、液状化被害が想定されている市・区役所及び市関連の医療機関に拡大した。「現在は、地域防災拠点に指定されている小中学校459箇所と、応急復旧活動拠点となる市、各区役所と横浜市立の防災拠点病院の23箇所への整備を進めています。小中学校はすでに417箇所まで整備しており、その他の施設を含めて今年度中に整備を完了する見込みになっています」と話すのは、環境創造局管路保全課の永埜宗孝係長だ。


永埜 宗孝 係長

 過去の大規模地震で避難所におけるトイレの衛生環境等が問題になったことを受けて、国交省が2016年3月に「マンホールトイレの整備・運用のためのガイドライン」を策定。「これを参考に従前の横浜市の技術基準を改定しています。年間の整備数も当初は年10箇所程度でしたが、2016年の熊本地震災害を契機にスピードアップし現在は、年50箇所の整備を進めています」と経緯を語る。
 採用した積水化学工業の「防災貯留型トイレシステム」は、仕切弁がマンホールと一体化しているため地震に強く、災害で断水した際もプール水などを用いて排泄物を直接下水道管に流せるため、衛生的なトイレ環境が保てるのが特長。しかも、下水道の管が破損した場合も、仕切弁によって一定期間貯めておけるほか、約500人が使用したら貯留弁を開けて排出できるため、避難者が使用する上で気になる臭気も防ぐ機能を持つ。

下水管の流末まで耐震化、設置訓練にも職員を派遣
 これに加え、同市の整備として特徴的なのが、敷地の外につながっている下水管の流末まで耐震化を図り、汚水処理場まで排出できるようにするなど、他の自治体よりも一歩進んだ耐震性に特化していることだ。また、公募によって「災害用ハマッコトイレ」という通称を名付け、出初め式や市が主催するイベントで利用方法等のPRをして市民への認知を促している。
 一方、災害時に迅速に使用するためには設置訓練などの備えが重要になる。そこで、地域防災拠点の委員が実施している防災訓練に職員を派遣し、マンホールトイレの使い方や上屋及び便器の設置の仕方などを指導している。「昨年度だけでも50箇所以上に派遣していますが、知識がなくても簡単に組み立てられるという声が多いですね」と手ごたえを感じている。
 なお、通常は1施設当たり5基を設置し、1基は身障者用として使用することを想定。夜間は防災備蓄庫に備蓄されているLEDランタンを照明として使用することで、実用性にも配慮しているという。
 今後の課題としては、こうした地域防災に協力してくれる自治会などの高齢化が進んでいることを挙げる。「防災体制を維持するには若い世代に引き継いでいくことが重要になるため、整備完了後は維持管理を強化していくことと併せて、小中学生と設置訓練を行う出前授業などにも力を入れ、防災への意識を高めていきたいと考えています」と抱負を語った。


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