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足元からの学校の安全保障 無償化・学校環境・学力・インクルーシブ教育

16面記事

書評

中村 文夫 編著
「人権」を守る学校づくりの視座

 「子どもたちは社会の未来である。現在を生き、未来を拓くための集団的な学びの場である学校の安全保障が大切である。それは人間の安全保障の重要な一つである」。本書冒頭の一文。
 本書も依拠する、アマルティア・センが提唱した『人間の安全保障』。その概念で必要な要素の一つ「『より基本的な』人権(人権全般にではなく)を強調し、『不利益』に特に関心を向けること」(同書名・小論集、東郷えりか訳)に本書の各章は共振しているように思える。
 「安心・安全」が確保されていないいじめへの危機対応、国連障害者権利委員会が勧告した分離教育からインクルーシブ教育への転換と移行へのロードマップ、データで読む統廃合で地域から消える学校と非正規化する教職員の現状、学校給食の無償化と有機食材活用による地域振興の必要性、“人材”育成に傾斜するデジタル教育への警鐘―など、全7章の切り口はさまざま。それぞれの著者が必要と考える「学校の安全保障」が語られていく。共通するのは、目の前の子どもなどの「人権」が守られているかという視座である。
 編著者の持論とも思える「普段使いの学び」が学校では実践されているかという問い掛け、納得するまで話し合える「地域」のつくり直しと、そこから立ち上がる学校を実現することへの願い。アプローチの方法は違っても、共感する読者も多いのではないだろうか。
(2750円 明石書店)
(矢)

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